舞台裏に戻ると、真っ先に一佳ちゃんが私の元に駆け寄ってくる。
頑張ってよかった。
と、
アナウンスの人の声が、会場に響いた。
あ、そっか。
私の次、波動先輩だったんだっけ。
波動先輩のパフォーマンスを見て、私は思わず声を上げた。
だって、すごく綺麗だったんだもの。
まるで妖精みたい。
波動先輩は自分の個性を上手く使いながら、空中を飛び回る。
誰もがうっとりと見惚れてしまうような、とても綺麗なパフォーマンスだった。
やがて、たくさんの拍手とともに、パフォーマンスを終えた波動先輩が、こちらに戻ってくる。
その時の先輩の表情は、とても綺麗だった。
***
5時かぁ。
結構時間あるし、ゆっくりできるね。
ドレスからA組の出し物をやる際に着ていたTシャツに着替え、波動先輩たちに挨拶をしてから控え室を出る。
会場に行くと、物間くんが舞台に上がって呼びかけている姿が見えた。
相変わらずだなぁ。
と、
峰田くんの声が聞こえ、思わず立ち止まった。
見れば、舞台の目の前にはA組のみんなの姿。
必死になって物間くんに抵抗するみんなの姿を見て、私は目を見開いた。
そんな中で、一佳ちゃんが制服姿で走ってきたかと思うと、物間くんに手刀を入れる。
そのままずるずると引きずられていく物間くんを見て、不覚にも笑ってしまう。
と、それに気がついたのか、みんながこちらを向いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!