弟から飲み物を受け取り、私はストローに口をつける。
てかこの入れ物、セメントス先生になってる。
よくできてるなぁ、なんて思いながらジュースを飲む。
ちなみに中身はココナッツジュース。
...セメントス先生と全然関係ないや。
だから女子は嫌いなんだよ。
一々めんどくさい。
もう隠す気はないから、それに関しては別にいい。
ただ、少し恥ずかしかった。
それだけだ。
いや、俺の女呼ばわりされて恥ずかしくない人いる?
普通は恥ずかしいよね、そうだよね。
ぽんぽんと頭を撫でてくる弟に対し、私はされるがまま。
周りの視線がこちらに向いているような気がするが、今はどうでもいい。
柄じゃないけど、こうやって今の私たちを見せることによって、他の女子や男子たちが寄ってくることはなくなるのかもしれない。
...中学の時みたいになるのは嫌だけれど、高校生にもなればもうそこまで子供じゃないだろう。
少なくとも、私はそう思ってる。
視界が一気に暗くなったかと思えば、ざらりとした感触が唇に走る。
それが弟の舌だと気がついたのは、弟が私から離れたあとだ。
そうだけどそうじゃない...。
顔を真っ赤にして俯く私に対し、弟は平気そうな顔をしている。
が、私の方をちらりと見て、クスッ、と笑った。
意地悪なんだから。
私はふいっ、と顔を背けて、ジュースをひとくち飲む。
この状況見た人、明日になったら学校中で騒ぎ立ててそうだよ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。