夜嵐くんの個性で風を起こし、子供たちを浮き上がらせる。
弟が氷結で大きな滑り台のようなものを形成し、私は炎で形を整える。
さっきの子供たちの個性のおかげで、いい感じに骨組みになってる。
でも、ただ滑るだけじゃつまんないよね。
...あ、そうだ。
思いついた内容を話すと、弟は頷いた。
せーのっ、と掛け声に合わせて、私と弟は大きな炎の輪を作り出す。
それをいくつか形成し、滑り台のあちこちに設置する。
ほら、結構華やかになった。
子供たちが楽しそうにしているのを見て、私は口元を緩ませる。
と、後ろがなんだか騒がしい。
見れば、弟の後ろに子供たちが群がっていた。
あの子だけズルいだの、自分も滑りたいだの。
言いたい放題だ。
不器用ながらもなんとか対応し、弟は子供たちを順番に並ばせ始めた。
乱暴なことをするのかと思っていたけど、ちゃんと聞いてみたら全然違っていた。
"すげぇとか、カッケェとか思わせねえといけねぇ。かと言って、見下してる相手にただ負かされちゃあ、クソみてぇな気分になるだけだ"
"あの子らあのままじゃ...仮免試験の時の俺みたいに、迷惑をかける奴になっちまうっス。同じ轍は踏みたくないっス"
二人の言葉には、本当に感動したな。
この子たちをどうにかしてやりたい、って気持ちが、すっごく伝わってきたんだ。
爆豪くんもただ言ってるんじゃなくて、すごく子供たちのことを自分の目線で捉えて考えていたり、ちゃんと考えてるのがわかってくる。
それから、弟も。
"あの子らの視野を広げてやるくらいは、俺たちにも出来るはずだ"
こう言った弟は、笑っていた。
弟はあまり人前で表情を変えないけれど、あの時は確かに笑っていたんだ。
なにを考えていたのかは、よくわからなかったけれど...。
たぶんみんな、考えていたことは一緒なんだろうな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。