膝の上乗せる必要ないでしょーが。
そう思って降りようとすると、離さないとでもいうようにお腹に腕を回される。
私が魘されてるところなんて、たぶん弟は見たことがなかったんだろう。
不安にさせちゃったかな。
またフラグ立てちゃって。
それより早く膝から降りたいんだが。
けど弟は、私を離してくれない。
そう言ったその時だった。
自室のドアがノックされ、誰かが顔を出す。
顔を出したのは、お茶子ちゃんだった。
彼女はそう言いながら、こちらに目を向ける。
当然目に映るのは、私を膝の上に乗せて抱きしめている弟の姿で...。
あ、これヤバいやつだ。
なんて言葉が脳内でリピートしたが、もう遅い。
顔を真っ赤にしてドアを閉め、逃げ去って行ったお茶子ちゃんに慌てて声をかける。
が、一足遅かったようだ。
どうしよう、絶対変な誤解された...。
風邪うつった?
頭おかしくなったんじゃない?
病人相手にこいつはなに言ってんだよ。
力ずくで離れようと試みるが、そう上手くはいかない。
まずこの握力ゴリラに力で勝てるはずないんだよね。
誤解の上にさらに誤解を招くようなこと言うんじゃないよ。
こいつに任せたらダメだわ、やっぱり。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!