合宿3日目。
私たちは昨日と同様に、過酷な特訓を続けていた。
その中でも一番辛そうなのは、
補習組の切島くんたちだった。
今日の朝、三奈ちゃんから聞いた話。
昨日の補習は、夜中の2時まで続いたらしい。
朝は7時起きだから、補習組は実質5時間しか寝ていないということになる。
それを聞いた私は、思わずげんなり。
勉強してて良かったなあ、って思ったよ。
補習なんて絶対受けたくないしね。
スパルタだな、先生。
だけど、合宿は遊びじゃない。
もちろん私たちも、楽しむ気持ちはあったとしても、ここには遊びに来たわけじゃない。
赤点ギリギリだと指摘された二人は、身をこわばらせる。
相澤先生の言葉に、私は心の中で呟いた。
私の原点。
"二人でヒーローになろうね、約束だよ"
幼い頃、弟と交わした約束。
それに対する母の応援、想い。
私はこの原点を、常に頭に置いておかなければならないんだね。
突然動きを止めた私を見てか、弟が問いかけてくる。
昨日と同様の特訓を続けていると、ピクシーボブの声が聞こえた。
肝試し...。
嫌がらせだよね、うん。
こうみえて私は、怖いのが苦手。
今も...うん、察してくれ。
夜よ、こないでくれ。
が、そんな私の願いは届くはずもなく、あっという間に夕方になってしまった。
今日の晩御飯は肉じゃが。
私は野菜を切ろうと、包丁を握る。
が、その横では...
爆豪くんが物凄いスピードで野菜を切っていた。
意外だ。
意外すぎる。
そんな彼の包丁さばきに、私はつい見惚れる。
なんか怒られた。
だけど、少しだけ彼の耳が赤くなっているように見えるのは、気のせいだろうか。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!