第76話

No.76
19,112
2020/09/22 06:08
合宿3日目。





私たちは昨日と同様に、過酷な特訓を続けていた。





その中でも一番辛そうなのは、







相澤消太
補習組、動き止まってるぞ
切島鋭児郎
ああっ、ウッス!
芦戸三奈
すいません、ちょっと眠くて...








補習組の切島くんたちだった。





今日の朝、三奈ちゃんから聞いた話。





昨日の補習は、夜中の2時まで続いたらしい。





朝は7時起きだから、補習組は実質5時間しか寝ていないということになる。





それを聞いた私は、思わずげんなり。





勉強してて良かったなあ、って思ったよ。





補習なんて絶対受けたくないしね。







相澤消太
だから言ったろ、きついって。個性の強化だけじゃない、何より期末で露呈した立ち回りの脆弱さ。お前らが何故他のクラスメイトたちより疲れているか、その意味をしっかり考えて動け








スパルタだな、先生。





だけど、合宿は遊びじゃない。





もちろん私たちも、楽しむ気持ちはあったとしても、ここには遊びに来たわけじゃない。







相澤消太
麗日!青山!お前らもだ。赤点こそ逃れたがギリギリだったぞ。30点がラインだとして35点くらいだ
麗日お茶子
えっ、ギリギリ...
青山優雅
心外...








赤点ギリギリだと指摘された二人は、身をこわばらせる。







相澤消太
気を抜くなよ。みんなもダラダラやるな!なにをするにも原点を常に意識しとけ。向上ってのはそういうもんだ。なんの為に汗かいて、なんの為にこうしてグチグチ言われるか、常に頭に置いておけ
あなた
(原点、か...)








相澤先生の言葉に、私は心の中で呟いた。





私の原点。







"二人でヒーローになろうね、約束だよ"







幼い頃、弟と交わした約束。





それに対する母の応援、想い。





私はこの原点を、常に頭に置いておかなければならないんだね。







轟焦凍
あなた、大丈夫か?








突然動きを止めた私を見てか、弟が問いかけてくる。







あなた
ん、大丈夫。続けるよ
轟焦凍
おう








昨日と同様の特訓を続けていると、ピクシーボブの声が聞こえた。







ピクシーボブ
それよりみんな!今日の晩はね!クラス対抗肝試しを決行するよ!しっかり訓練した後はしっかり楽しいことがある!ザ・アメとムチ!








肝試し...。





嫌がらせだよね、うん。





こうみえて私は、怖いのが苦手。





今も...うん、察してくれ。





夜よ、こないでくれ。





が、そんな私の願いは届くはずもなく、あっという間に夕方になってしまった。





今日の晩御飯は肉じゃが。





私は野菜を切ろうと、包丁を握る。





が、その横では...







爆豪勝己
...








爆豪くんが物凄いスピードで野菜を切っていた。





意外だ。





意外すぎる。





そんな彼の包丁さばきに、私はつい見惚れる。







爆豪勝己
さっきから何見とんだ。てめぇもさっさと野菜切れや
あなた
いやぁ、爆豪くん包丁使うの上手いなって思って...見惚れてた
爆豪勝己
っ!いいからさっさとやれや!








なんか怒られた。





だけど、少しだけ彼の耳が赤くなっているように見えるのは、気のせいだろうか。

プリ小説オーディオドラマ