必殺技、か。
寮に入ってから4日が過ぎ、いつもの日常が戻ってきた。
ヒーローを目指し、切磋琢磨する日常へ。
そんな中で、今日からの授業では一人最低でも二つ、必殺技を作ってもらうとのことだ。
そのための訓練を、今行っている。
私はとにかく、そのための炎を出し続けていた。
炎を出し続けていたところに、オールマイトが姿を見せる。
私は自分の両手を見つめた。
弟のように氷結が使えたら、まだ違ったのかもしれない。
目からウロコとは、このような時を指すのだろうか。
なりたい自分、か...。
"もういい。お前は失敗作だ"
父の言葉が、私の脳内でこだました。
"失敗作"
この言葉が、どうしても脳内から離れない。
10年たった今でも、鮮明に覚えている。
私の中のなにかを、どんどん黒く染めていった原因の言葉だった。
思わず口走った言葉に気づき、慌てて口を押さえる。
なにを言ってるんだ、私は。
オールマイトはこちらを見つめ、驚いたような表情をしていた。
似ている?
私と爆豪くんが?
貶されてるようにしか思えないのはなぜ。
なりたい自分になるために。
私は、もっと努力をしなければいけない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。