弟はそう言って、じっ、と私を見つめてくる。
朝になって、弟の熱は無事に下がっていた。
まあ、体調が完全に治ったかどうかは本人しかわからないから、こんなこと言って今に至るわけなんだけど。
大丈夫そうだね。
そう言ってから弟の部屋を出て、自室に向かう。
正直どうなるか心配だったけど、ちゃんと治ってよかった。
さすがに2日連続で休むのはまずいからね。
ただでさえヒーロー科はハードなのに、仮免講習もある上で授業についていくためには、相当な努力が必要だと私は思ってる。
だから、あんまり休むわけにはいかないんだ。
私はまだ、努力しなきゃいけないんだから。
***
そう言って職員室に入ると、相澤先生がこちらを振り向く。
私が外出許可をもらいにきた理由は、それだけだ。
寮に入ってからは、こうやって外出許可をもらわなくちゃいけないんだよね。
特に目をつけられているわけでもないし、問題児とかそんなんでもないから許可はすぐにおりる。
...最近、お母さんに会えてないなぁ。
寮に入ってからは簡単に会えないってわかってたけど、仮免講習もあるからさらに会える機会が減っちゃったんだよね。
お姉ちゃんたちはどうしてるんだろ。
夏兄にも、もう長い間会えてないし。
手紙を書いてるとはいえ、やっぱり直接会って話したい。
手紙だけじゃおさまらないほど、話したいことがたくさんあるんだもの。
それはきっと、弟も一緒だ。
会いたいなぁ...。
ぽや、とそんなことを考えながら、私はゆっくりとした足取りで教室に戻った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。