第358話

No.356
8,611
2021/01/28 12:38
あなた
爆豪くん、帰ったんじゃなかったの?
爆豪勝己
んなわけねぇだろうが







てっきり先に帰ったんだと思ってた。





姿見えなかったし。







爆豪勝己
てめぇ起きて大丈夫なんかよ
あなた
うん。全然平気







爆豪くんはもうひとつ椅子を持ってくると、弟の横に腰掛けた。





...いくら弟が嫌でもそんな顔しないであげて。







爆豪勝己
おい舐めプ野郎。それ貸せ
轟焦凍
なんでだ?
爆豪勝己
決まってんだろ。俺がやんだよ







当然のように言う爆豪くんに、弟は不満そうにムッ、とする。







轟焦凍
なんでだ。俺だってできる
爆豪勝己
てめぇさっきので言えることじゃねえだろうが
轟焦凍
...







さっきの?





黙り込んだ弟を見つめながら首を傾げると、爆豪くんが話してくれた。







爆豪勝己
手当てのやり方ヘッタクソなんだよこいつァ。湿布もゆるゆる、絆創膏もぐちゃぐちゃ。こんなんでできるわけねえだろ







どうやら図星だったらしく、弟は身を縮める。







あなた
じゃあ、今焦凍に貼ってある湿布と絆創膏って...?
爆豪勝己
仕方ねぇから俺がやった







私はその時の光景を思わず想像した。





二人で椅子に腰掛けながら、弟の顔にぺたぺたと絆創膏を貼っていく爆豪くん。





...なんともいえない光景である。





てか、どうりでこんなに綺麗に貼れているわけだ。





なるほどね、納得。







轟焦凍
俺は自分でできるから、って言ったのに
爆豪勝己
あまりにもド下手くそすぎて見てらんなかったんだよ







ムスッ、と頬を膨らませている弟を見て、爆豪くんは愉快そうに笑う。





なんかこの二人、仲良くなった?





仮免講習すごい。







あなた
じゃあ爆豪くん、お願いできる?
爆豪勝己
しゃーねえなぁ







そう言いながら、爆豪くんは救急箱から絆創膏と湿布を取り出す。





でも、まずはそれらを貼る前に消毒だ。





私はこれが結構嫌い。





理由は決まってる、滲みるからだ。







あなた
っ、
爆豪勝己
我慢しろ
あなた
わかってるよ、っ







消毒液を含ませた脱脂綿で、そっと私の顔に触れる。





しばらくそれらを繰り返したあと、ようやく絆創膏を手に持った。







爆豪勝己
怪我の数どうなっとんだ
あなた
知らないよそんなの







そんなに多いの?





跡残ったらやだなぁ。







轟焦凍
ギャングオルカ容赦なかったもんな
あなた
まあね。でも、為になったよ
轟焦凍
さすがあなただな







ぼろぼろだけどね。







爆豪勝己
おい動くな。ズレるだろうが
あなた
あ、ごめん







意外と慎重なんだよね、爆豪くんって。





真剣な表情で、私の顔に絆創膏や湿布を貼りつけていく爆豪くん。





そんな彼の手を、私は黙って見つめていた。

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