てっきり先に帰ったんだと思ってた。
姿見えなかったし。
爆豪くんはもうひとつ椅子を持ってくると、弟の横に腰掛けた。
...いくら弟が嫌でもそんな顔しないであげて。
当然のように言う爆豪くんに、弟は不満そうにムッ、とする。
さっきの?
黙り込んだ弟を見つめながら首を傾げると、爆豪くんが話してくれた。
どうやら図星だったらしく、弟は身を縮める。
私はその時の光景を思わず想像した。
二人で椅子に腰掛けながら、弟の顔にぺたぺたと絆創膏を貼っていく爆豪くん。
...なんともいえない光景である。
てか、どうりでこんなに綺麗に貼れているわけだ。
なるほどね、納得。
ムスッ、と頬を膨らませている弟を見て、爆豪くんは愉快そうに笑う。
なんかこの二人、仲良くなった?
仮免講習すごい。
そう言いながら、爆豪くんは救急箱から絆創膏と湿布を取り出す。
でも、まずはそれらを貼る前に消毒だ。
私はこれが結構嫌い。
理由は決まってる、滲みるからだ。
消毒液を含ませた脱脂綿で、そっと私の顔に触れる。
しばらくそれらを繰り返したあと、ようやく絆創膏を手に持った。
そんなに多いの?
跡残ったらやだなぁ。
ぼろぼろだけどね。
意外と慎重なんだよね、爆豪くんって。
真剣な表情で、私の顔に絆創膏や湿布を貼りつけていく爆豪くん。
そんな彼の手を、私は黙って見つめていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。