午前中の座学が終了し、昼食。
室内にある食堂に行き、食べたいものを選ぶ。
なに食べよっかな。
なにを食べるか迷っていると、後ろから元気な声が聞こえてきた。
振り向くと、夜嵐くんが私と弟に向かってぶんぶんと手を振っていた。
目立ってるじゃん、勘弁して。
他の人たちもいるんだからね。
迷惑かけるわけにはいかないもの。
結局弟は安定の蕎麦、夜嵐くんはうどん、私はハンバーグ定食を頼んだ。
弟を挟んで、私と夜嵐くんが席に座る。
相変わらず元気だな。
正直まだ好かない、って言ってたのにも関わらず、夜嵐くんは私と弟に話しかけてくる。
そう言って、私はハンバーグを口に運ぶ。
弟も同様に、特になにも話すことなく蕎麦をすすっている。
けれど夜嵐くんは、その間もずっと話しかけてくる一方だった。
そう言うや否や、夜嵐くんはうどんをものすごい勢いで食べ始める。
...なんで無理に親しくしようとするんだろ。
そんなのしたって、意味ないじゃん。
わざわざ嫌いな奴に「友達になろう」なんて、私だったら絶対に言わない。
だって、関わりたくないもの。
仮に友達になったとしても、絶対に片方はぎこちなくなるだろう。
それは友達なんて言わない。
上辺だけの友達といるくらいだったら、ひとりで居た方がずっといい。
"偽り"の友達なんて、作ろうとは思わない。
私は小さく呟き、再びハンバーグを口に運ぶ。
そんな私のことを、弟がじっ、と見つめていたことなど知らずに。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!