第348話

No.346
8,736
2021/01/20 11:13
午前中の座学が終了し、昼食。





室内にある食堂に行き、食べたいものを選ぶ。





なに食べよっかな。







夜嵐イナサ
轟!轟さん!







なにを食べるか迷っていると、後ろから元気な声が聞こえてきた。





振り向くと、夜嵐くんが私と弟に向かってぶんぶんと手を振っていた。





目立ってるじゃん、勘弁して。







夜嵐イナサ
今から昼飯ッスか!?
轟焦凍
ああ
夜嵐イナサ
俺も一緒にいいッスか!?
轟焦凍
...あなたは?
あなた
私は別に構わないけど
轟焦凍
あなたが言うなら、俺も構わねえぞ
夜嵐イナサ
あざーッす!!
あなた
夜嵐くん、ちょっと声大きいよ







他の人たちもいるんだからね。





迷惑かけるわけにはいかないもの。





結局弟は安定の蕎麦、夜嵐くんはうどん、私はハンバーグ定食を頼んだ。





弟を挟んで、私と夜嵐くんが席に座る。







夜嵐イナサ
仮免講習、二人はどんな感じッスか?
轟焦凍
特に問題はねぇな
あなた
座学についていけるかどうか心配かな







相変わらず元気だな。





正直まだ好かない、って言ってたのにも関わらず、夜嵐くんは私と弟に話しかけてくる。







轟焦凍
夜嵐、別に無理に親しくしようとしなくていい
夜嵐イナサ
いや、俺はあんたらと仲良くなりたいッス!!
あなた
ほんとに無理しないでいいよ
夜嵐イナサ
無理なんてとんでもない!本心ッスよ!
あなた
そう







そう言って、私はハンバーグを口に運ぶ。





弟も同様に、特になにも話すことなく蕎麦をすすっている。





けれど夜嵐くんは、その間もずっと話しかけてくる一方だった。







あなた
夜嵐くん。あんまり喋ってばっかだと時間なくなるよ
夜嵐イナサ
やっべ、忘れてた!!







そう言うや否や、夜嵐くんはうどんをものすごい勢いで食べ始める。





...なんで無理に親しくしようとするんだろ。





そんなのしたって、意味ないじゃん。





わざわざ嫌いな奴に「友達になろう」なんて、私だったら絶対に言わない。





だって、関わりたくないもの。





仮に友達になったとしても、絶対に片方はぎこちなくなるだろう。





それは友達なんて言わない。





上辺だけの友達といるくらいだったら、ひとりで居た方がずっといい。





"偽り"の友達なんて、作ろうとは思わない。







あなた
...意味わかんない
轟焦凍
...







私は小さく呟き、再びハンバーグを口に運ぶ。





そんな私のことを、弟がじっ、と見つめていたことなど知らずに。

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