現在、近くのスーパーで買い物中。
弟はコンビニに居た時と同じように、周りを興味深そうに見回している。
見ていてちょっとおもしろい。
恐る恐るといったようにカゴを持つ弟。
慣れてないとはいえ、反応がおもしろい。
卵を2パックカゴに入れて、次に行く。
野菜を入れて、他にも調味料や飲み物などもいくつかカゴに入れる。
それから、今日のメインである蕎麦を取りに行こうとする。
が、私の中にちょっとした悪戯心が芽生えた。
くるりと方向転換して、レジに向かうフリをする。
あ、カゴの中確かめてる。
わざと聞こえないフリをする。
弟はとことことこちらについてきつつ、蕎麦はどうしたのかと連呼している。
やばい、面白すぎる。
だけど、もうそろそろちょっと可哀想かな。
やめるか。
そう思って後ろを振り向くと、
弟の姿が消えていた。
あとには、ぽつんと買い物カゴが置かれている。
名前を呼んでみるが、返事はない。
どこ行ったんだ。
昔から弟は出かけた時、勝手にうろついて迷子になってたっけ。
いや、でも今は高校生だぞ?
そんなわけない。
とりあえず買い物カゴを持って、辺りをぶらつく。
弟はスーパーに来たことはほとんどないから、勝手にどこでも行くことはないと思うのだけれど。
まあ、現にどっか行っちゃったけどね。
にしても人が多すぎて、全然見つからない。
こちとら早く帰りてえんだよ。
とっとと出てきてくれよ。
あたかも最初からここにいましたみたいな感じで立っとんなや。
正直結構焦ってたんだからな。
私の心配返せ。
そう言うや否や、弟はカゴに大量の蕎麦をドサドサと入れる。
私はその大量の蕎麦に目を移したあと、弟をジト目で見つめた。
全く。
弟は頼りになるのかアホなのか、わからん。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!