笑顔、か。
今は何故か、昔のように笑えなくなった。
時々、あの頃に戻りたいなんて思う時がある。
だけど、そんなのは叶いっこない。
叶わない願いなんて持っていても、そんなの無駄なものに過ぎない。
だけど、ヒーローになりたいという夢は、絶対に叶えてみせる。
大切な人を、あなたを、守りたい。
***
晩飯を食べ、風呂に入る。
それらを済ませたあと、なんとなく縁側に向かった。
縁側に座り、涼む。
家のどこに居ても、思い出すのはあなたのことばかり。
こんなにも俺は、姉に甘えてばかりだったのか。
今更ながら自覚する。
俺はどこの誰よりも、姉を信頼している自信がある。
自分が一番近くに居た存在だと思っているからだ。
ああ、だめだ。
この時間帯になると、どうしてもあなたに甘えたくなってしまう。
学校にいる時は会話もあまりしない。
だけどその代わり、家ではブツブツと文句を言いながら甘えさせてくれる。
ガキの頃から全然変わってねえんだな、俺は。
自室に戻って布団に寝転がるが、昨日と同じような感じで中々寝付けない。
あなたは今頃、なにしてんだろう。
無事に帰ってきてほしい。
いや、自分で救けに行く。
自分で出来る限りのことをする。
みんなには否定されるだろうな。
だけど構わない。
あなたに、早く会いたい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!