放課後。
寮に帰った私は、1階の共有スペースのソファで本を読んでくつろいでいた。
お茶子ちゃんが隣に腰を下ろし、私の手元にある本を覗き込む。
まあ、暇さえあれば本読んでるのは当たりかな。
読書はいろんな知識が身につくし、結構自分のためになるんだよね。
いろんなものを見る視界も広がってくるんだ。
こういう素直なとこはほんとに可愛い。
しかも頑張り屋さんだし。
ソファでくつろいでいる私に声をかけてきたのは、弟。
その目は、ついてこい、ってことかな。
弟は私の腕を掴むと、ずんずんと歩いていく。
無言やめてよ怖いから。
そう言うだけで結局なにも返答はなく、弟の部屋へと連れていかれる。
まじでなんで連れてきたんだ。
弟は自室のドアを閉めると、私の方に体を向けた。
お互いになにも言わず、沈黙する。
連れてきたのはそっちなんだから、あんたがなにか喋りなさいよ。
そう思っていると、
弟が突然、私に向かって両腕を広げてきた。
首を傾げて疑問をぶつけると、弟は少し口を『へ』の形にしながら言う。
それはあんたが好んでやってることでしょーが。
私の反応を見て、弟はしゅん、と項垂れる。
そう言ってから顔を上げ、子犬のような瞳で私を見つめてきた。
私は言葉を呑み込み、軽くため息をつく。
そう言って私は、弟に抱きつく。
弟は素直にやるとは思っていなかったのか、驚いたように瞬きを繰り返す。
が、すぐにぎゅうっ、と抱きしめ返してきた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!