弟は袋からポッキーを1本取り出し、私の前に差し出す。
いや、ほんとにやるのかよ。
なんで二度目のポッキーゲームをやらなきゃいかんのだ。
そう内心毒づきながらも、私はポッキーの端を加える。
私が加えたのを確認したあと、弟もポッキーの反対側の端を加えた。
弟はそう言って、私の両肩を掴んで逃げられないようにしてくる。
まあ、さっき我慢してくれたからいっか。
今日は甘えてもいい、って言ったものね。
サクサクと音をたてながら、お互いにポッキーを食べ進める。
てか、食べるの早くない?
さっきと勢い全然違うんだけど。
ふに、と柔らかい感触が唇に伝わり、思わず声を上げる。
すぐ離れてくれると思ったら、弟はそのまま唇を割って舌を入れてきた。
おいおい、勘弁してくれよ。
絡めてくる舌は、ポッキーのせいで甘い。
頭がフワフワしてきて、なにも考えられなくなってくる。
しばらくされるがままになっていたが、やがて弟は満足したのか、唇を離した。
言いながら、弟はぺろりと自分の唇を舐める。
私も自分で口元を拭い、ふいっ、と弟から顔を背けた。
にやりと意地悪そうな笑みを浮かべる弟に、私は全力で否定する。
出たよドS。
この笑い方をする時の弟は、ドSモードに突入した証拠だ。
ひとりで寝ろや。
弟はしゅん、としたように俯くと、小声で言った。
そう言うと、弟はますます項垂れる。
そんなに項垂れることか...?
弟の反応に私は少し悩む。
全く、ほんとにこいつは。
少し悩んだ結果、私は立ち上がった。
ドアノブに手をかける私を見て、弟は悲しそうな声で言う。
私はくるりと振り向き、弟の額を指で押した。
ばっ、と勢いよく顔を上げた弟は、嬉しそうに目を輝かせた。
あーもう、結局こいつの思い通りになるじゃんか。
ダメだとか言っておきながらこうやって許可してる私も、結局どうかしてるよなぁ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!