第333話

Happy birthday〜轟姉弟〜
9,842
2021/01/11 00:54
麗日お茶子
あなたちゃん!はい、プレゼント!
あなた
え、あ、ありがとう...。
葉隠透
私からも〜!







今日は学校がなくて、お休み。





そんな日の午後に共有スペースに行こうとすると、突然お茶子ちゃんたちに目隠しをされたのだ。





なにごとかとパニックになっている私などお構い無しに、女子たちは私を共有スペースまで強制連行。





共有スペースに着いたあとで目隠しを外してもらうと、そこに広がっていたのは豪華な料理や飾り付け。





そんな中で、ソファーには弟がちょこんと座っていて。





しかも変な三角の帽子を被ったまま。





どうやら弟も、私と同じようなことを男子たちにされたらしい。





そして私も強制的に座らされ、今に至るわけだ。







耳郎響香
にしても、自分で自分の誕生日忘れてるとはね
あなた
まあね。自分の誕生日には無関心だからさ







隣でジュースを飲んでいた響香ちゃんが苦笑する。





でも本当に、私は誕生日のことなんてどうでもいい日なんだ。





今まではお姉ちゃんにおめでとう、って言われて気がつくくらいだったんだから。





みんなみたいに祝ってもらえるなんて、そんなこと、全然なかったから。







緑谷出久
轟くん、蕎麦だらけだね...。
轟焦凍
ああ。でも嬉しい...!







誕生日プレゼントにもらったのか、弟は大量の蕎麦を抱えて口元を緩ませている。





誕生日プレゼントが蕎麦...。





まあ、変なものもらうよりマシか。







上鳴電気
じゃ、改めて。轟姉弟の誕生日を祝って...







"かんぱい!!"







その声とともに、グラスの音が1年A組の寮内に響いた。









***









麗日お茶子
お腹いっぱいや〜
蛙吹梅雨
かなり食べてたわね、お茶子ちゃん







料理をたらふく食べて満足そうな表情を浮かべるお茶子ちゃん。





周りのみんなも同じような表情だ。





ふと時計を見ると、既に7時半をまわっていた。





結構続いてたんだね、このパーティ。







飯田天哉
みんな!すぐに片付けてお風呂などを済ませるんだ!
上鳴電気
そう言う飯田も手伝ってよ〜







お皿やテーブルなどを片付け始めるみんなを見て、私も手伝おうと立ち上がる。





と、







爆豪勝己
おい







声をかけられて、振り返る。





見れば、爆豪くんが私の後ろで仁王立ちしていた。







あなた
どうかした?
爆豪勝己
...これ
あなた
え?わっ、







しばらくの沈黙のあとに、なにかを押し付けるようにして渡される。





慌てて受け取って見ると、渡されたのは可愛らしいブレスレットだった。







爆豪勝己
やる
あなた
いいの?
爆豪勝己
おう







早速手首に付けて、爆豪くんの前に腕を突き出してみる。







あなた
どうかな?
爆豪勝己
...似合ってんじゃねーの







ふいっ、と背中を向けて言う爆豪くんに、私は思わず笑った。







爆豪勝己
...めでとよ、あなた







ぽつりと言ってそのまま背を向けて歩き出す爆豪くん。





あの爆豪くんが、誕生日を祝ってくれるなんて...!





いやそうじゃないでしょ今は。





少しだけ感動していたが、慌てて首を振って爆豪くんを追いかける。







あなた
爆豪くん







呼びかければ、紅い瞳が私を捉える。





私はその瞳を見つめ、微笑んだ。







あなた
祝ってくれてありがとうね
爆豪勝己
!...おう







少しの間目を見開いてかたまっていた爆豪くんだが、再びそっぽを向いて歩いていった。





彼の耳が少し赤くなってたのは、触れないでおこう。







切島鋭児郎
姫と轟は手伝わなくても大丈夫だぞ!
瀬呂範太
そーそー。なんたって今日の二人は主役だもんな!
上鳴電気
ほら、二人はゆっくりくつろいでて!







改めて手伝いに行こうとすると、三人にそう言われてキッチンから追い出された。





なんか悪いなぁ。







轟焦凍
あなた







名前を呼ばれて振り向くと、すぐ近くに弟が立っていた。





たぶんこいつも私と同じ感じかな。







轟焦凍
ちょっと部屋来てくんねぇか?
あなた
え、うん。いいけど
轟焦凍
決まりだな








有無を言わさないまま強制連行。





私はずるずると引きずられるようにして、弟と部屋に向かう。





その際に、みんながガッツポーズを取っていたことなど知らずに。







あなた
急にどうしたの?
轟焦凍
渡してぇもんがあるんだ







部屋に着いてから、弟は大量の蕎麦が入った袋をどんと置く。





本当に蕎麦だらけだな...。





蕎麦の量の多さに少し呆れていると、弟は私の目の前に座った。





そして、







轟焦凍
渡してぇもんはこれだ







小さな箱を渡された。





なんだろ。







あなた
開けてもいい?
轟焦凍
おう







箱の中に入っていたのは、腕時計だった。





しかも結構可愛い。







あなた
焦凍が選んだの?
轟焦凍
ああ...。気に入らなかったか?







腕時計から目を離さないままの私に、弟が不安そうに尋ねてくる。





そんな弟に、私は思わず口元を緩ませた。







あなた
んーん、すっごい気に入った。嬉しいよ
轟焦凍
ほんとか...!







嬉しそうに目を輝かせる弟を見て、私は笑う。





というより、







あなた
じゃあ、私からも
轟焦凍
え?







私はポケットに閉まっていた箱を取り出し、弟に渡す。





弟は驚いたようにそれを受け取り、中身を見る。





その中身は、







轟焦凍
これ、腕時計か?
あなた
うん







そう、腕時計だ。





しかも、弟がくれた私の腕時計と色違いのやつ。







あなた
見事に種類被っててびっくりしたよ
轟焦凍
ほんとだな。色は違ぇけど、被ると思ってなかった







なんだかおかしくなってきて、お互いに笑い合う。







あなた
腕時計ありがとね。大事にするよ
轟焦凍
俺も、ありがとな。大事にする







そう言って再び笑い合う。





今までは無関心だったけど、こういう誕生日も悪くないかな。





お互いに祝いあって、プレゼントももらって。





これもきっと、私たちの"初めて"なんだ。





でもきっと、私たちが知らないことはまだたくさんある。





だったら今年は、その知らないことをもっと知っていこう。





...弟と一緒に。







轟焦凍
誕生日おめでとう、あなた
あなた
そっちこそ、おめでとう。焦凍







今回の1月11日は、今までのどんな誕生日よりも特別な日だ。





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☆Happy birthday☆ 〜轟姉弟〜

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