第591話

No.586
8,054
2021/07/25 03:13
上鳴電気
ひーめっ!
あなた
わっ、なんだ、上鳴くんか...







お風呂から上がって共有スペースに戻ると、急に上鳴くんが声をかけてきた。





びっくりするからやめてよ、もう。







あなた
どうかしたの?
峰田実
姫に聞きてえことがあるんだ!







あ、峰田くんもいたんだ。





というか、







あなた
聞きたいこと、って...?
上鳴電気
いや、風呂入る時さ、轟の背中に引っ掻かれた傷みたいなのあったんだけど...







引っ掻かれた傷...?





しばらく考えて、はっ、とした。





そうだ、私あの時、弟の背中引っ掻いちゃって...。





傷になってたんだ、あれ。





てことは、みんなにバレてる...?







峰田実
あれって、"誰かとヤった時"に作る傷だとオイラは思うんだが...?姫は轟とヤったのか!?







ド直球に言われ、私は思わず戸惑う。





ちらりと周りを見ると、男子は興味津々、女子は赤面。





どうしよう、これ、知ってたら誤魔化し用がないよね...。





たぶん弟も同じようなこと聞かれたと思うけど、なんて答えたんだろう。





誤魔化したとは思うけど、どんなことを言ったのかは私にはわからない。





ここでお互いに話した内容が違ったら、ヤったことを肯定しているようなものだ。





誤魔化したことがバレてしまう。





どうしよう。







上鳴電気
どうなんだ!?
峰田実
ヤったのか!?
あなた
え、っと...







こういう時、弟ならなんて言うんだろ。





なんて考えていると、お風呂上がりの弟がタオルを首にかけたまま、共有スペースまで歩いてきた。





思わず目を向けると、弟も私に気がついたらしい。





お互いに目が合い、私はSOSを求める。





けどここで弟が乱入してきたら逆効果だ。





弟は上鳴くんと峰田くんを交互に見て、今の私の状況を察したらしい。





誰が見てもわかるくらいに狼狽えだした。





まあ、そりゃ焦るよね。





せめて口パクで...と思ったが、そうもいかないらしい。





だって、周りのみんなが私と弟を交互に見つめているのだから。





口パクで伝えようとしたら、すぐにバレてしまう。





弟は、どこか祈るような目で私を見つめている。





...仕方ない、弟が言いそうなことをとりあえず言ってみよう。





それでもし違ってたら、またなんとかして誤魔化そう。





そう思いながら、私は恐る恐る口を開いた。







あなた
ね、
上鳴電気
ね?
あなた
猫に、引っ掻かれてたの...







爪で引っ掻かれたような傷だ、って言ってたから、弟が真っ先に思いつくものといえばこれだろう。





ど、どう...?





2人は私の言葉を聞くと、顔を見合わせる。





それから、はぁ、とため息をついた。







上鳴電気
なんだ違ったのかよ〜
峰田実
ヤってねぇのかよ〜
上鳴電気
位置的に絶対そうだと思ったのに







2人の会話を聞いて、私はぱちぱちと瞬きを繰り返す。





もしかして、あってたの...?





よかった、なんとかなった...。





私は思わず、安堵の息をついた。、

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