弟は私を抱き止め、そのまま背中を軽く叩く。
私は呼吸をするので精一杯で、ただ首を振ることしかできなかった。
あれだけやって、大丈夫なわけない。
弟の落ち込んだ声に、私は心の中で突っ込んだ。
体を起こして、弟を見つめて言った。
と、弟は私と目が合った瞬間、再び触れるだけのキスをしてきた。
...これ、無意識だったりする?
百歩譲って二人だけの時なら、まだいい。
だけどみんなの前でされるのは、さすがにごめんだ。
個性にかかっているとはいえ、さすがにみんなの前でキスなんてできない。
先程お茶子ちゃんが言っていた、同性でもありなのかどうかを確かめる。
なら弟自身が仲が良い(自称)と言っていた爆豪くんなら、その役にぴったりだろう。
緑谷くんはなんか可哀想だから、提案に出すのはやめておく。
弟のせいで若干はだけてしまった服を直していると、物凄い視線を感じて振り向く。
視線の正体は、やはり弟。
軽く睨んで言えば、弟は黙る。
なんてこと言うんだこいつは。
なんか心配になってきたよ。
大丈夫かな、こいつ。
自信満々に言うけどさあんた。
爆破されるだけだと思うんだけど。
とても爆豪くんから許可おりるなんて思えないんだよね。
...私、ちょっと間違っちゃったかもしれない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!