上鳴くんがそう言うと、爆豪くんは右手を上鳴くんの方へ向けて、威嚇するように軽く爆破させた。
煽るからだよ、もう。
弟と緑谷くんの会話が聞こえるが、それどころじゃない。
無言でポッキーを食べ進める爆豪くんに対し、私は少し食べたところで止まったまま。
いや、近いんだって。
そろそろポッキー折った方がいいよね...。
ポッキーを折ろうとすると、爆豪くんが私の肩を掴んできた。
え、なに、どうするの?
プチパニックになっている私などお構い無しに、爆豪くんはポッキーを食べ進めていく。
そしてとうとう、あとひと口でキスする、という段階まできてしまった。
え、これやばいよね?
ルビーのように紅い瞳と目が合う。
一瞬その瞳に見惚れてしまい、吸い込まれそうになる。
弟もそうだけど、爆豪くんも綺麗な目してるんだよね。
暴言さえなければ普通にかっこいいと思うんだけどなぁ。
そんなことを呑気に考えていると、爆豪くんはすっ、と目を細めた。
と思った次の瞬間、ゆっくりと唇を開き、そのまま私に近づいてくる。
あ、やばい。
これ、キスされるパターンだ。
今思えば、顔を背けたりといろいろな方法はあったと思う。
だけどその時の私は、パニックで動かないままだったんだ。
爆豪くんの唇が私の唇に触れそうになった、その時だ。
誰かに体を引っ張られた。
その衝動で爆豪くんは離れ、盛大に尻もちをつく。
一方、私は誰かに口元を押さえられ、抱きしめられていた。
こんなことをするのは、ひとりしかいない。
私を抱きしめているのは、やっぱり弟だ。
爆豪くんは尻もちをついた状態で、弟を睨む。
弟に掴みかかろうとする爆豪くんを、緑谷くんが必死になって止める。
あの、言っちゃ悪いんだけど。
まず私を助けてほしいんだが...。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。