第529話

No.526
6,683
2021/06/21 07:57
轟焦凍
悪ぃ、心配かけちまったな







そう言いながら、弟は私の背中を一定のリズムで叩く。







あなた
ごめんね焦凍...私のせいで、っ
轟焦凍
お前のせいなんかじゃねえ。あんまり自分を責めちゃダメだぞ







ほっ、としたせいか、涙が全然止まらない。





一旦体を離して、お互いに見つめ合う。





弟はふっ、と口元を緩めると、私の頬に触れ、親指で涙を拭ってくれる。







轟焦凍
もう泣かないでくれ
あなた
...っ
轟焦凍
俺はお前の笑った顔が見てぇ







拭っても拭っても止まらない涙。





弟はそれを見て困ったように笑うと、私を自分の方へと引き寄せて額にキスを落とす。





急な行動に驚いていると、弟はもう一度私を見つめて微笑んだ。







轟焦凍
瓦礫に埋もれてた時、正直お前が居てくれてよかったって思う。すげぇ安心できたんだ
あなた
...
轟焦凍
ありがとな、あなた







私の涙を拭いながら、弟は言葉を紡ぐ。





それを聞いて思い出した。





そうだ、私お礼言ってないじゃん。





お礼を言うのは弟じゃない、私の方だ。







あなた
...焦凍も、
轟焦凍
ん?
あなた
私を助けてくれて、ありがとう







そう言って、私は涙混じりの笑顔を向ける。





一番痛いはずの弟が笑っているんだ。





だから、笑わなきゃ。





ヒーローは、人を安心させるためにいつも笑っているのだから。







轟焦凍
...おう。どういたしまして







弟はしばらく驚いたように目を見開いていたが、やがてそう言ってふわりと笑った。





と、こちらに手を伸ばし、私の頬に触れる。







轟焦凍
...ヒーローは、
あなた
轟焦凍
大切な人ひとり守れねぇようじゃ、名乗れねぇからな
あなた







愛おしそうにこちらを見つめる弟の目にいたたまれなくなって、私は頬を赤く染めて目をそらす。







轟焦凍
なあ、あなた
あなた
な、なに?
轟焦凍
...キス、していいか?







そらしていた目を向けると、弟は真剣な瞳でこちらを見つめていた。





私は返事の代わりに、自分から弟にキスをする。





弟は大きく目を見開いて驚いていたが、やがて合意だとわかったのか、私の背中と後頭部に腕を回した。







轟焦凍
あなた、好きだ







そう言って、啄むようなキスを繰り返す。





今は寮の部屋じゃないから、触れるだけの優しいキスだ。





まあ、寮に帰って甘える時になったら、多少は覚悟しておこう。

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