第258話

No.258
10,898
2020/12/11 13:22
轟焦凍
帰ろうあなた。立てるか?








弟は私から体を離すと、そう言って立ち上がり、私に手を差し伸べる。





私は弟の手を借りて、立ち上がる。







あなた
あの、ありがとね。来てくれて
轟焦凍
おう








教室に戻ると、中には誰もいなかった。





私と弟の席に、それぞれの鞄が置いてあるだけ。







あなた
でも、なんで来てくれたの?普通だったら放っておくとこだと思ったんだけど








鞄を持ちながら、弟に声をかける。





あんな初々しい感じで呼び出されただけなんだし、普通だったら放っておくだろう。





なのに、弟は来てくれた。





なんでわかったんだろ。







轟焦凍
なんとなくだ
あなた
なんじゃそりゃ








お前は野生動物か。





なんて思っていると、弟はクスリと笑う。







轟焦凍
ほんとは、お前がなにかされてるんじゃないか、って不安だったんだ。だから追いかけた。そしたらすぐにお前の声が聞こえて、慌てて声を頼りに向かったんだ








窓から差し込む夕日が、弟の横顔を照らす。







轟焦凍
悪かった。昨日は俺がやべぇ時にお前が来てくれたのに、俺はその状況になる前に駆けつけてやれなかった








弟は目を伏せる。





長い睫毛が、瞳に影を落とした。







あなた
そんなことない








私はそう言って、笑いかける。







あなた
"なにかされる前に"助けてくれたんだから、それは一緒だよ








弟は驚いたようにぱちぱちと瞬きを繰り返す。





けど、少ししてふっ、と笑った。







あなた
...じゃ、帰ろっか
轟焦凍
おう








教室を出て、校門を出る。





そこから私と弟は、寮へと歩く。







あなた
あ、そういえばさ
轟焦凍
なんだ?
あなた
あんた最後に、あの男子になんか言ってたよね?なんて言ったの?








先程疑問だったことを聞いてみる。





なんであんなに怯えたような表情になったのか、知りたかったしね。







轟焦凍
あぁ、あの時か








弟はなんでもないとでもいうように呟くと、先程言った言葉を口にした。







轟焦凍
"次あなたに近づいたら炙る"って言ったんだ
あなた
...








私は思わず弟をジト目で見つめた。





だってこいつ、ヒーロー志望だよね?





でも今の言ってること、ヴィランと一緒じゃんか。

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