第587話

No.582
8,565
2021/07/23 15:01
緑谷出久
轟くん!轟さん!おかえり!







寮に帰ると、すぐに緑谷くんがこちらに駆けてきた。





言っちゃ悪いけど、なんか子犬みたい。







上鳴電気
おー姫!轟!やっと帰ってきた!
麗日お茶子
全然連絡つかんから心配したよ!







みんなは私たちに気がつくと、わっ、と集まってくる。







あなた
ただいま。心配かけちゃってごめんね
麗日お茶子
無事ならいいんよ!
八百万百
なんともなくてよかったですわ
あなた
あー...







なんともなかった、ってことはないんだけど...。







切島鋭児郎
姫?どした?







急に黙り込んだ私を見て、切島くんが声をかけてくる。







あなた
え、っと...その、あの、







先程の行為が脳内で再生され、どんどん顔が熱くなっていくのがわかる。





やばいやばい、思い出しちゃダメだ。





そう思いながらなんとなく隣にいる弟を見て、私は思わず絶句した。







轟焦凍
...







なんと、弟も同じように顔を真っ赤にさせていたからだ。





いつもはこんな表情、滅多に見せないのに...。





これにはさすがのみんなも驚いたらしく、目を見開いている。







上鳴電気
え...まじでどした?
飯田天哉
なにかあったのか?
瀬呂範太
轟までこんな真っ赤になんの、珍しいな







みんなが不思議そうに問いかけてくる中、私と弟は無言。





だって、言えるわけないじゃん...。





いくらなんでも無理だよ...。





と、その時だった。







相澤消太
轟姉弟、帰ってるか







寮のドアが開いて、相澤先生が顔を覗かせたのは。







あなた
相澤先生...
相澤消太
帰ってたか。早速だが、2人に話がある。外で話すから、上着とか持ってこい
あなた
...わかりました、すぐ行きます







たぶん、今日のことだよね...。





相澤先生は私の言葉を聞いて頷くと、外へと出ていく。





それを見た私と弟も、みんなが不思議そうな表情をしている中、部屋に戻って上着を取りに行く。





それから、再び寮の外へと足を運んだ。









***









相澤消太
来たか







外へ出ると、相澤先生は近くのベンチに座って待ってくれていた。





私と弟もベンチの方へと歩いていき、腰を下ろす。







相澤消太
率直に聞く。なにがあった







そう言う相澤先生の瞳は、ひどく真剣なものだった。





さすがとしか言いようがないよ、相澤先生。





生徒のこと、よく見てる証拠だよね。





だって私たち、まだなにも言ってないのに。





こんなに遅く帰ってきたのも、なにか事情がある、ってわかってくれているんだもの。

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