布団に入ってしばらくして、弟がそう切りだす。
え、もうそんな時間なんだ。
目だけでちらりと時計を見てみると、確かにお昼だった。
むくりと布団から起き上がり、弟はコンビニの袋の中を漁り出す。
私はその姿を、ぼんやりと見つめていた。
私のお昼ご飯はどうにかなったとしても、弟のご飯はどうするんだ...。
料理できないから、なんかしてあげないと。
のそりと起き上がった私を見て、弟は不思議そうな表情をする。
私はそのまま立ち上がり、一旦部屋を出ようとする。
が、熱のせいか、バランスを崩して倒れかけた。
弟が慌てて抱きとめてくれたおかげで、なんとか倒れることは免れた。
頭がふわふわする。
宙に浮いているみたいな感覚だ。
思わず肩を竦めた私を見て、弟は眉を下げる。
そのまま私を横向きに抱えあげると、布団まで連れていって降ろした。
どの口が言うんだか。
栄養偏るでしょーが。
蕎麦以外にも、野菜だってとらなきゃいけないのに。
なんで疑問形なんだよ。
やっぱりこいつ、料理とかダメだね。
料理させたら大惨事だよ、寮が壊れる。
私は返す言葉が見つからず、黙り込む。
そんな私には気づかず、弟は再びコンビニ袋を漁る。
そう言って差し出してきたのは、カットされたフルーツ。
まあ確かに、これだけなら食べれると思うけど。
そう言って微笑むと、弟は少し驚いた表情をする。
けれどすぐにそう言って、微笑み返してくれた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。