教室に戻る途中、偶然にも弟とバッタリ会ってしまった。
弟は私の姿を見ると、持っていた教科書やノートをすべて床に落とす。
なんだよその古典的な驚き方は。
やっぱりそこだよね。
私は頬をかいてから、弟に向き直って説明する。
そう言いながらフードに付いている猫耳を弄ると、急に弟が私を抱きしめてきた。
いやなにしてんだよ、早くノートとか拾いなよ。
てかこんなとこで抱きしめてこないで。
素直で率直な言葉に思わず照れてしまい、私は顔をそらす。
そんな私に気づいたのか、弟は体を離すと、私を見て口元を緩めた。
その甘々な瞳で見つめてくるのやめてくれます?
なんか、いたたまれない...。
少し沈黙したあとにそう言えば、弟は満足そうに微笑んだ。
相変わらず心臓に悪い微笑みだ...いい意味で。
仕方ないな、ほんとに。
そう思いながら、私は落ちているノートなどを拾ってやった。
***
教室に戻った瞬間、みんなが私を見てそんなことを言いながら、こちらに集まってきた。
デジャヴ...。
私のひと言を聞いて、みんながざわつく。
まあ、先生がこんな格好させると思わないものね。
だって、着せられた本人である私もびっくりだもん。
...って、これ理由になってないよね。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。