夜嵐くんがそう言って、元気に走って去っていく。
私は軽く手を振って答え、弟も同じような行動をとる。
仮免講習が終わってから、私たちは会場を出てバス停に向かっている最中だ。
すっごい疲れた...。
明日もこれ続くのか。
耐えられるかな、私。
鼻で笑う爆豪くんを、私は軽く睨めつける。
ふん。
体力お化けにはわかるはずないもん。
私はふいっ、とそっぽを向き、バス停へと足を進める。
課題...。
そういえばそんなのあったね。
承諾すれば、弟は嬉しそうに目を輝かせる。
...だんだんこいつが犬に見えてきたよ。
ほら、しっぽ振ってるよしっぽを...。
幻覚まで見えるようになりかけてる。
こんなんで疲れてたらダメだダメだ。
その幻覚を取り払うように、私はふるふると首を振って頬を叩いた。
弟が驚いたように振り返る。
弟に頬叩かれたら、間違いなく歯が何本か逝くことは確実。
肩借りて寝てたら、間違いなくあとで爆豪くんに変なこと言われる。
結果、デメリットしかないのだ。
早く寮に帰りたい。
今頃みんな何してるかなぁ。
そんなことしたら目立っちゃうじゃんか。
意地でも歩いてやる。
弟は心配そうな表情で何度もこちらを振り返るが、私は大丈夫の一点張り。
こんなところでグダグダになってたら、これからの仮免講習やっていけないもの。
私はもっと頑張らなくちゃいけないんだから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。