しばらく歩いていると、甲高い悲鳴のような声が聞こえた。
私は思わず立ち止まった。
みんなは聞こえていなかったようで、そのまま歩き続ける。
が、弟がそんな私に気がつき、振り向いて言った。
不思議そうにしている弟に答えずに、私は走り出した。
弟や緑谷くんが止めに入るが、私は構わず走り出す。
少し走っていった先に見えたのは、
木に吊るされている梅雨ちゃんと、誰かに馬乗りしているお茶子ちゃんの姿だった。
お茶子ちゃんの下には、一人の女の子がいる。
だけどその女の子は馬乗りされているにも関わらず、お茶子ちゃんの足になにかを刺している。
思わず女の子に向かって個性を発動させる。
その瞬間、女の子はお茶子ちゃんを突き飛ばし、私の攻撃を避けた。
突き飛ばされたお茶子ちゃんに駆け寄り、私は手を差し伸べる。
と、
梅雨ちゃんの声に、私は後ろを振り向いた。
次の瞬間、
左腕に激痛が走った。
見れば、先程の女の子が、私の左腕に注射器の太いバージョンのような物を刺していた。
なに、これ。
血を吸われてる?
てか、痛い...!
やばい、そんなに血を抜き取ったら...!
一瞬、視界がぐらつく。
力が抜けた瞬間、地面に倒されて馬乗りにされる。
やばいやばい。
なに、この人。
血を見て喜んでるの?
いったいなにがしたいんだ。
てか、この人もヴィランだよね?
梅雨ちゃんとお茶子ちゃんが駆け寄ってきた、その時だ。
弟の声が聞こえた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。