その日の放課後のことだった。
帰宅しようと準備をしているところへ、一人の男子が教室のドアから顔を覗かせた。
名前を呼ばれ、ドアの方に目を向ける。
飯田くんがなにかを言うが、彼はそれを断る。
話がある、って言ってたよね?
はて?
いったいなんの話だろ。
脳内を?マークでいっぱいにしながら、私は了承する。
彼はぱあっ、と顔を輝かせ、ついてこいと言わんばかりに歩きだした。
弟が呼び止めようとしてくるが、私はそれを振り切ってあとをついていく。
どこまで行くんだろ。
もう結構距離あるけど。
しばらく歩いたところで立ち止まり、彼はくるりとこちらに向き直る。
てか、私彼のこと全く知らないんだけど。
それで話って、なに?
ならなんなんだろ。
全く心当たりがないんだが。
彼は少し緊張したように顔を強ばらせ、すぅっ、と息を吸う。
そして深い息をついたあと、まっすぐ私を見つめて言った。
.......は?
思ってもみない言葉に、私は思わず思考停止状態。
え、だってさ。
これって、告白だよね?
え、なんで?
私は何を言ったらいいのかわからなくなった。
だって、全く面識ない人からいきなり付き合ってください、だなんて...。
断るしかないよね。
まず私、好きな人いないし。
でもこういうのって、どう断るのが一番ベストなんだろう。
誰かアドバイスをくれ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!