第505話

No.502
6,978
2021/05/22 04:04
そのあとも、私は何度も悲鳴を上げて弟にしがみつくことを繰り返していた。





てかこいつ、こういうの嫌いじゃないのかよ。





前はびびりまくってたくせに。







あなた
あ、あんた、怖いの苦手じゃなかったの?
轟焦凍
苦手とかそんなんじゃねえ。ただ、人だ、ってわかってたら怖くもなんともねえぞ?







苦手だ、ってことは知ってるから今更弁解しなくていいんだってば。





でもまあ、今は人だからってことで怖がってないのは本当みたい。







轟焦凍
お前ほんとに大丈夫か?おんぶするか?
あなた
大丈夫、ちゃんと自分で歩くから
轟焦凍
そうか...。まあ、無理すんなよ
あなた
わかってる







意地でも歩いてやる。





そんなことを意気込んでみるものの、やっぱり気が気じゃなくて...。





弟とは比べて怯えるばかりだ。







轟焦凍
あなた
!こ、今度はなに?
轟焦凍
なんか手形あるぞ、ほら







言われるがままに見てみると、赤ん坊くらいの小さな赤い手形が、壁や廊下を埋め尽くすようについていた。







あなた
まっ...む、無理...
轟焦凍
おい、大丈夫か?
あなた
だいじょばない...







私はぎゅう、と弟に思い切りしがみつく。





これ考えた人誰よ、いくらなんでも不気味すぎるんだけど。





引き返したい気持ちでいっぱいだけど、元の道も怖いからなぁ。







轟焦凍
とりあえず進もう。もう少しで終わると思うぞ







そう言われ、渋々頷く。





個性使ってるとかそんなんじゃなくて、もうただただ怖いだけじゃん。





ホラー映画とかに出てきそうだもの、ここ。





しばらく歩き続けた、その時だ。







あなた
や、っ!
轟焦凍
!どうした







突然声を上げた私を、弟は驚いたように見つめる。







あなた
て、天井からなんか落ちてきたの...
轟焦凍
天井から?







そんな会話をしている間にも、そのなにかは天井から落ちてくる。





弟が身を屈め、目を凝らして落ちてきたものを見る。







轟焦凍
これ、血じゃねえか?







疑問形で言われても...。





てか、なんで血が天井から落ちてくるのよ。





廊下を濡らすほどの血の大盤振る舞いに、思わず愕然とする。





が、その時、天井から血だらけの人がさかさま状態で降りてきた。







心操人使
オレヲココカラツレダシテクレ...
あなた
い、いやぁあああ!!!
心操人使
え、ちょっ
轟焦凍
あ、あなた!







突然のことに驚き、私は悲鳴を上げて弟をその場に置いて走り出した。





なにあれなにあれなにあれ!!





だから怖いの苦手なのに!!







轟焦凍
待てってば!
あなた
!焦凍...







しばらく走ったところで、腕を掴まれる。





振り向けば、弟が少し息をきらしながら私を見つめていた。







轟焦凍
はぁ...置いてくなよ
あなた
ご、ごめん







涙目になっていたらしい。





弟はふっ、と眉を下げて笑うと、私の目じりに親指を当てて涙を拭う。







轟焦凍
ほら、もう出口だぞ
あなた
え、あ、ほんとだ...
轟焦凍
そんなに怖かったか?
あなた
!うるさいな、最初から怖いって言ってたじゃん
轟焦凍
そうか、可愛いな
あなた
なにがよ







こんのぉ...許さん。





隣でクスクス笑う弟を見て、私は軽く頭を叩いてやったのだった。

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