こっわ。
弟は両方の手を見つめた。
弟には弟なりの課題がある。
必殺技だけじゃない。
自分の個性を、どう生かすことができるのか。
必殺技は、自分の個性を最大限に生かさなければならない。
自分の個性を完全に使いこなせていなければ、意味がないんだ。
それならもう、決めた。
私たちは拳を合わせ、再びそれぞれの訓練に戻る。
火力を上げる。
私の最初の課題は、これだ。
燈矢兄さんのように、もっと、熱く。
今の、って...。
爆豪くんの声で、我に返る。
見れば、オールマイトと私の頭上に、コンクリートの塊が落ちてきていた。
相澤先生と弟の、焦った声が聞こえる。
私は咄嗟に炎を出そうと、手の平を上に向けた。
が、
私が炎を出すより先に、緑谷くんがコンクリートの塊を蹴り飛ばした。
そして見事に着地し、私とオールマイトの方に振り向く。
緑谷くんのおかげで助かった。
私になんともないことがわかると、弟は安心したような表情になった。
心配性かよ。
いつの間にかきていた二人が、緑谷くんを見つめていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。