第551話

No.546
6,398
2021/07/04 07:20
あなた
元に、戻ってる...?
轟焦凍
ああ







弟は安心したように、私を見て微笑む。





よかった、ほんとに元に戻れたんだ。





と、







轟焦凍
!!







突然、弟が目をまん丸に見開いた。





と思ったら、かあっ、と顔を真っ赤にさせて起き上がる。





そのまま慌てたようにタンスから一枚服を取り出すと、私に向かって投げてきた。





謎すぎる行動に、私はわけがわからず瞬きを繰り返す。





どうしたよ。







あなた
どうしたの?
轟焦凍
それ、着てろ
あなた
なんで?
轟焦凍
いいから早く着ろ!!







いやなんで怒ってるのさ。





疑問に思う私に気がついたのか、弟は目をこちらに向けてぼそりと言った。







轟焦凍
...お前、今の自分の格好見てみろよ
あなた
え?







自分の格好...?





言われるがままに、私は今の自分の格好を見てみる。





...そして、







あなた
〜ッ!!?







声にならない声を上げた。





だって今の私の格好は、裸に等しかったのだから。





ヤオモモちゃんに作ってもらった服は、サイズが合わなくなったせいでビリビリに破けていた。





だけど下着は伸縮性なのか、破けることはなく、身につけていたままだった。





けど、今の状態は下着を身につけてるとはいえ、ほぼ裸だ。





弟がこんな反応をしたのは、そのせいだったんだ。







あなた
ご、ごごごごめん!!今着るから!
轟焦凍
...







そう言って、弟から渡された服を慌てて着る。





渡されたのは、黒色のパーカー。





こいつ、こんなの持ってたんだ。





そんなことを頭の隅で考えながら、とにかく服を着る。





...めっちゃぶかぶかなんだけど。





そりゃそっか。





だって身長も、体格も、弟の方が上なんだもの。





そりゃぶかぶかになるよね。







あなた
着たよ
轟焦凍
...おう







弟は小さく返事をすると、恐る恐るといったようにこちらに振り向く。







轟焦凍
...
あなた
...なに?
轟焦凍
いや...なんかそれ、いいな







はい?





どゆこと?







轟焦凍
あなたが俺の服着てるの、なんかすげぇいいな、って...
あなた
変態ですか?
轟焦凍
変態じゃねえ







これはいわゆる、彼シャツというやつだろうか。





てかこんなことしてる場合じゃないんだよ、もうすぐで晩御飯の時間だから、普通に自分の服取りに行かないと。







あなた
...







でも、この状態で取りに行けるわけない。





だって上はダボダボでも着ていることには変わりないけど、下は下着以外なにも履いてないんだよ。





上だけ着た状態でもし誰かに見つかったら、単なる黒歴史じゃん。







轟焦凍
...あなた







そんな時、弟がしばらく間をあけて、私を呼んだ。

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