そのやり取りを聞いていた弟が、また呟く。
それ言うの2回目だよ。
相澤先生はそう言い終わると、共有スペースから出ていった。
そう言うと、切島くんは立ち上がった。
3人が寮から出ていったのを見て、弟がまた呟いた。
3回目だよ。
そして爆豪くんのツッコミのキレが良い。
この二人、やっぱり漫才いけるな。
楽しそうに笑っているみんなを見ながら、私は小さく呟いた。
弟が返事をし、私の方を見て優しく微笑む。
弟が急に話をふると、爆豪くんが盛大に突っ込む。
そのツッコミを黙って見ていると、爆豪くんは私を見ながら頭をがしがしかいた。
顔を上げて爆豪くんを見れば、彼もまたこちらを見つめていた。
頑張れてる自覚はない。
昔からいくら頑張ってもダメだったから。
他の人よりも何倍も頑張らなきゃ、って思ってるから。
そう言ったかと思うと、突然爆豪くんが私の頭を撫でてきた。
驚いて声を上げる私に対し、爆豪くんは意地悪そうに笑っている。
側でやり取りを見ていた弟が、爆豪くんの方に手を伸ばす。
が、弟の手が触れる前に、爆豪くんは私の頭から手を離した。
プシシと笑いながらそう言うと、爆豪くんは私たちに背を向けて歩いていってしまった。
呆然としながら彼の後ろ姿を見送っていると、再び頭に誰かの手が置かれた。
と思ったら、少し乱暴に撫で回される。
爆豪くんの真似しなくていいんだよ。
てかなんだよマーキング、って。
あんたは猫か。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。