思わずびくりと肩を跳ねらせる。
そう声を上げているのは、小さな少年。
その声を聞きながら、ぼんやりとしたままテレビに目をやる。
偶然だろうが、それに応えるように、テレビの中で父が炎を上げる。
少年を抑えようとするもうひとりの子の言葉を聞いて、少年がエンデヴァーのファンなのだろうと察する。
少年は父を指さして、大声で言った。
思わず目を見開いた。
それと同時に、テレビが空からの映像に切り替わる。
改人脳無を、父が懸命に追っている姿が映し出される。
ふとテレビに映った人物を見て、思わず声を漏らす。
ホークスも、父と応戦している。
頑張っている。
No.1と、No.2が。
お父さん...っ。
血を流し、ぼろぼろになりながら必死で脳無と戦い続ける、ヒーローとしての父の姿。
"今、俺らの為に体張っとる男は誰や!!見ろや!!"
先程少年の言葉が、脳内に流れてくる。
私も弟も、同様に拳を握る。
身体が熱くなり、自然と炎が噴き出る。
"見てるよ/見てるぞ"
私たちは、同時に叫んだ。
それから、食い入るようにテレビ画面を見つめる。
どうか、どうかお願い、勝って。
もうこれ以上、なにも失いたくないの...。
ちゃんと見てる、見てるから。
神様、どうか...。
私はテレビを見ながら拳を握り、必死で祈り続ける。
現場にはいないから、テレビの前で祈ることしか今の私にはできない。
でも、それでも。
私も弟もちゃんと、あなたのことを見てるから。
昨日のヒーロービルボードチャートでも言われた通り、見てるから。
だからお願い、No.1ヒーロー。
どうか、勝って。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!