第410話

No.408
7,515
2021/04/05 07:55
あなた
で、どうしたの?急に
轟焦凍
...これ







ぼそりとそう呟いた弟は、私にスマホの画面を見せてきた。







あなた
...お父さん?







スマホの画面に表示されていたのは、『クソ親父』という文字。





...親父ならともかく、"クソ"はもう取ってあげなよ。





どうやらお父さんからの電話らしい。







あなた
出ないの?
轟焦凍
...
あなた
出てあげなよ







そう言うと、弟はあからさまに嫌そうに顔を顰めた。





そんな嫌そうな顔しないの。







あなた
もう...。ほら、これでいいでしょ
轟焦凍
あ、おい!
あなた
切るのはダメだよ
轟焦凍
...







着信が鳴っているにも関わらず無視しようとする弟のスマホを奪い、スピーカーにして電話に出る。





と、すぐにお父さんの声が流れてきた。







エンデヴァー
焦凍!!ちょうどだ!!ちょうど暇ができた







弟は無表情かつ無言を貫く。







エンデヴァー
明日の講習、久々に俺が見てやr







ブチッ。







轟焦凍
...







お父さんが言い終わる前に、弟は無言で通話終了のボタンを押した。





あーあ。







轟焦凍
はぁ...







それから盛大なため息をついた。





もう、顔顔。





イケメンが台無しだよ。







あなた
もう...。顔どうにかしなよ
轟焦凍
...







ガンギマリ状態の弟の頬っぺを両手で挟み、顔を近づける。





そうすれば、弟はいつものぽやぽやした表情に戻っていった。







あなた
お父さんが嫌いなのはわかるけどさ、もうちょっと歩み寄ってあげようよ
轟焦凍
でも、あいつはあなたとお母さんを...
あなた
...







過去の記憶が、鮮明に蘇ってくる。





それでも私は、首を振った。







あなた
気にしてない、って言えば嘘になる。正直なところ、私はお母さんを虐めたお父さんをまだ許してない。お姉ちゃんや夏兄、それから焦凍にしたことも...







私自身は、まだ許せない。





私だって、酷い仕打ちを受けてきたから。





正直今でも、お父さんとまともに話せないだろう。







あなた
でもね、歩み寄ろうとしてるのは確かだよ
轟焦凍
...







どんな扱いをされても、親子だ、ってことには変わりないから。





そう言うと、弟は少しだけ笑った。






轟焦凍
あなたらしいな







月をバックに微笑む弟は、とても綺麗だった。





一瞬だけ見惚れてしまい、慌てて首を横に振る。







轟焦凍
どうした?
あなた
ううん、なんでもない。あのね、相手が話してる途中に電話切るのはよくないよ
轟焦凍
クソ親父だから問題ねえ







お父さん可哀想。

プリ小説オーディオドラマ