バスが来るまでは、かなり時間がある。
行く宛てもなく、3人でぶらぶらと近場を歩く。
そんな中で、弟が突然声を上げた。
つられて立ち止まると、少し前を歩いていた爆豪くんも立ち止まってこちらを振り向く。
は?
ブランコあるのは知ってるよ、ここ公園だもん。
てかブランコがどうしたのさ。
弟は私の言葉を聞くと、くるりと背を向けて公園の方へと歩き始めた。
いやちょっと待て単独行動しないでよ。
てってことマイペースに歩いていく弟の背中を、慌てて追いかける。
と、
ぐいっ、と腕を引っ張られた。
振り向くと、爆豪くんが眉間に皺を寄せてこちらを見ている。
まあ、弟はブランコとか乗ったことないからね。
ああ言うのもわかるんだ。
保護者なんかにするんじゃないよ。
軽くため息をついて、私は公園に向かおうと体の向きを変える。
が、また腕を掴まれた。
別になんもないと思うけどな。
けど、爆豪くんは私が承諾するまで離してくれなさそうだ。
まあ、別に迷惑なわけじゃないし。
彼の言葉に了承し、二人で公園に入る。
ブランコに目をやると、丁度弟が座るところだった。
私と爆豪くんは特にすることもないので、近くのベンチに腰を下ろす。
___そしてそのまま1分が経過した。
私と爆豪くんは立ち上がり、同時にツッコミを入れる。
遊びたかったんじゃないのかこいつは。
それじゃあベンチで休んでるのと同じじゃんか。
なんなら背もたれあるベンチの方がいいよ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!