弟は本気だ。
脳内で逃げなきゃという警告が鳴るが、体は動こうとしない。
そう言うなり、弟はゆっくりと私を押し倒す。
それから、私を見つめた。
こくん、と息を呑む。
したい、と...。
弟ははっきり、そう言った。
だけど、
そうだ、私たちは血の繋がった姉弟。
こんなこと、しちゃダメなんだ。
私は思わず目を逸らした。
抵抗できないんじゃなくて、してないだけ。
だって私は、弟が好きなんだから。
お互いに同じ感情を抱いているのは変わらない。
別に弟が嫌なわけじゃない。
ただ恐いだけだ。
覚悟を決めて、頷く。
そんな私に弟は優しく微笑むと、次の瞬間、私の首元に顔を埋めた。
がぶ、と噛みつかれ、私は声を上げたいのを必死に堪える。
弟は首元から顔を上げると、私を見つめた。
そう言うと弟は、服の裾から手を入れてきた。
思わず体がびくりと跳ねる。
弟の言葉に、私は黙って頷く。
する、と手を入れてきたかと思うと、すぐに弟の手が私の地肌に触れる。
触られる度に体が反応しつつも、なんとか声を抑える。
そう言いながら、弟は笑ってキスをしてくる。
軽く触れるだけのキスを繰り返しながら、手を服の中へと侵入させてくる。
弟の手が、私の下着に触れた。
その時だ。
得体の知れない、恐怖に襲われたのは。
思わず声を上げる。
弟は慌てて私の服から手を抜き、驚いたようにこちらを見つめた。
名前を呟いたかと思うと、こちらを見つめたまま目を見開いた。
私の目から、涙が零れたからだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。