B組の釜戸に火をつけ終わり、私と弟はA組のみんなの元へ戻る。
今度はA組の釜戸ひとつひとつに、火をつけて回る。
自信満々に釜戸に火をつけようとした爆豪くんだったが、派手な爆発音が響いただけだった。
絶対わかってないやつだ、これ。
火をつけながら言って笑いかけると、ヤオモモちゃんも笑って頷いてくれる。
うん、可愛い。
その声に振り向くと、お茶子ちゃんたちのところに弟が火をつけ終わったところだった。
弟はそこから立ち上がる直前、少し口角を上げて微笑む。
役に立てたことが嬉しかった、そんなふうに思えた。
まあなんだかんだあって、カレー作りは無事に終了。
いただきます、とみんなで手を合わせ、カレーにがっつく。
切島くんの言う通り、確かにお店とかでは微妙かもしれない。
だけど、みんなで頑張って作ったから、トレーニングで疲れていたからという状況が相まって、とても美味しく感じる。
こうやって楽しく食べるから、っていうのもあるかもしれないね。
瀬呂くんの言葉を聞いて、ヤオモモちゃんはショックを受けたのか、落ち込んだ。
私はいてもたってもいられず、瀬呂くんに一発拳を入れる。
おしゃべりしながら食べていると、あっという間にカレーを食べ終えてしまう。
各自で食器を洗って、部屋に戻る。
それからまた、みんなで一緒に温泉に入りにいく。
今日は特に問題なく、峰田くんも女子風呂を覗こうとはしてこなかった。
珍しい、なんかあったのかな。
峰田くんのことだから、リベンジ〜、とか言ってきそうだったのに。
疑問に思いながら温泉を出たあと、途中で会った切島くんがこっそり耳打ちしてくれた。
なに言ってんだあいつは。
そう言いながら、切島くんはばしばしと背中を叩いてくる。
痛いからやめてくれ。
仮にやったとしても、あいつは天然だから良心でやろうとしたんだろうな、って考えで終わるもの。
もし弟が誤って女子風呂を覗いてしまったとしても、カッコイイから、っていう理由とかで許されそう。
ま、どうでもいいんだけどね。
こうして、合宿2日目も無事に終了したのでした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。