あれから3分ぐらいたったが、弟がこちらに来ることはない。
これなら逃げきれそうだけど、大丈夫かな。
上鳴くんがそう言った、次の瞬間。
大きな爆発音が聞こえた。
おそらく爆豪くんだろう。
切島くんが声を上げて、ある方向を指さす。
そこに目を向けると、必死に走っている弟の姿が見えた。
どうやら爆豪くんに見つかって、追いかけられているようだ。
弟に向かって、みんなが声援を送る。
ツートップの争いだぁ...。
爆豪くんの手が、弟に触れる寸前になる。
が、その手が届く前に、弟が氷結で地面を滑って回避。
なんか、スケートやってるみたい。
ぎゃいぎゃいとなにか言っているようだが、少し遠くにいる私たちには全く聞こえない。
てか、よく体力もつよね。
さすがは体力お化け。
残りの時間は僅か。
相澤先生の言葉を聞いて、私たちは弟に再び声援を送る。
そんな中で、私も声を上げた。
弟が私の声に気がついたのか、こちらに顔を向ける。
私は弟と目を合わせ、笑って言った。
弟はこちらを見つめたまま、一瞬、大きく目を見開いた。
が、すぐに前を見据えると、全速力で走り出す。
爆豪くんは少し気をゆるめていたせいか、一気に距離があいてしまっていた。
てか、まだあんなに走れる体力残ってるんだ...。
率直すぎるでしょーが。
...まあ、あながち間違いではないと思うけど。
私たち姉弟なんだから。
でも、今はちょっと違った関係、って言った方が正しいのかな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。