第619話

No.613
6,173
2021/08/11 15:53
相澤消太
前から気になってたんだが、







車の中で、相澤先生が口を開く。







相澤消太
お前ら、ほんとに姉弟なのか?
あなた
はい?
相澤消太
いや、姉弟にしては距離が近すぎると思ってな







まあ、確かに...。







あなた
姉弟ですよ。苗字も一緒ですし、見た目は、まあ...。あ、でも私は母親と似てる、ってよく言われるので、写真見てもらえばわかるかと思いますよ
相澤消太
いや、すまん。疑ってるわけじゃない。ちょっと気になっただけだ







先生、それ逆に疑ってる、って言ってるようなものじゃ...。







あなた
まあ、先生が気になってしまうのも無理はないと思いますけどね...







そう言いながら、私はちらりと自分の左手を見る。





私の左手には、誰かの手が重ねられている。





まあ、ひとりしかいないよね。







轟焦凍
...







無論、隣に座っている弟の手だ。





さっきからずっと手の甲すりすりしてきたり、にぎにぎしてきたり、もうなにかしてないと落ち着かないのかなこいつは。





そりゃ今どきこんなことしてる高校生の姉弟なんていないし、先生もちょっと不思議に思うよね。





...まあ、あながち間違ってはないかも。





いけないことしてるし。







相澤消太
前に轟姉が幼児化した時の解除条件だったが...やったのか?
あなた
...ノーコメントで
轟焦凍
しましたよ
あなた
ちょっ、!







真顔でさらりと言ってのけた弟に、私は思わず声を上げる。





こいつ...とんでもない爆弾落としやがった。







轟焦凍
解除条件通り、30回
相澤消太
...
轟焦凍
あと俺たちはちゃんと血の繋がった姉弟です
相澤消太
...おう
轟焦凍
けど姉弟でも俺はあなたのこと大好きですし、あなたも俺が好きです
相澤消太
...そうか







穴があったら入りたい気分とはまさにこのこと。





なんてこと言うんだ、こいつは。







相澤消太
...仲、良いんだな
轟焦凍
そうですね
相澤消太
そうか、それはいいことだ







先生の言葉を聞いて、嬉しそうに私の手を握ってくる弟。





あーもう、やってくれたなこいつ。







あなた
先生、すみません。焦凍が変なこと言って...
相澤消太
いや、大丈夫だ。気にするな。姉弟で仲が良いのはいいことだしな
あなた
ほんと、すみません...







ぺこぺこと謝る私の横で、弟はきょとんとしている。





「俺なんか変なこと言ったか?」とでもいいたげな表情で。





いくら素とはいえ、普通は言っちゃまずいことだ、ってわかるでしょーが。





この天然ぽやぽや野郎め。

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