第615話

No.609
6,455
2021/08/09 02:50
父が腕を突き上げた格好のまま、ふらりと倒れかかる。





が、それをホークスが慌てて受け止め、地面に座らせている。





その時だった。







???
ちょーっと待ってくれよ。色々想定外なんだが







テレビから聞き覚えのある声が聞こえてきた。





思わずテレビに顔を向ける。







荼毘
まァとりあえず、初めましてかな?エンデヴァー







そこに映っていた人物を見て、私は大きく目を見開いた。





荼毘は蒼炎を放ち、父やホークスを巻き込んで周りを取り囲む。







モブキャラ(女)
ヴィラン連合!荼毘です!連合メンバーが!炎の壁を展開し、エンデヴァーらを囲い込んでおります!!







隣にいる弟も、焦っているような表情でテレビを見つめている。







相澤消太
あいつか...!堂々と、どういうつもりだ







"お前もこい、轟あなた"






以前、彼らに攫われた時のことを思い出す。





自然と身体が震える。





どうしてあいつが...。







あなた
...っ
爆豪勝己
...落ち着け、あなた







身体の震えに気がついたのか、爆豪くんが静かにそう言って、私の頭を撫でた。





それのおかげか、少しだけ気持ちが落ち着く。





父を庇うようにして前に立ったホークスに、荼毘が飛びかかっていく。





ダメ、やめて...!





そう思った、その時だ。







???
ニュース見て跳んできたぜ!面白ぇ事になってんな!エンデヴァー!ホークス!







突然、誰かが彼らの間に現れた。







ミルコ
てめェ連合だな!蹴っ飛ばす!







プロヒーローのミルコだ。





それを見た荼毘が、小声でなにかを呟く。





かと思ったら、ごぽっ、となにかを吐き出し、その吐き出された物質に包まれた。







荼毘
また今度な、No.1ヒーローさんよ。また話せる機会が来るだろう。その時まで、精々頑張れ







黒いなにかに包まれながら、次の瞬間、荼毘は声を上げた。







荼毘
死ぬんじゃねえぞ!!轟炎司!!







そう言った荼毘の目は、なにかを訴えるように見開かれていた。







ミルコ
今話してけ!







ミルコがそう言って蹴りを入れるが、荼毘はそれよりも早く姿を消した。





荼毘が消えた瞬間、あれだけ周りを取り囲んで燃え盛っていた蒼炎が消え去り、なにごともなかったかのように戻る。





どうやら危機は、去ったようだ。





けど私は、先程の荼毘の言葉が離れなかった。







"死ぬんじゃねえぞ!!轟炎司!!"







なぜ彼は、わざわざ父を名前で呼んだのだろう。





なにか意図があるんだろうか。





結局いくら考えても、答えにはたどり着かなかった。

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