瀬呂くんがそう声をかけるが、爆豪くんはそっぽを向いてしまう。
が、そのひと言にぴくりと反応した。
瀬呂くん、爆豪くん煽るの上手だな。
***
そして結局、爆豪くんはドラムを叩く。
が、期待以上にすごかった。
めっちゃ上手なの。
爆豪くんの演奏を見て、みんなが口々に言う。
でもまあ、満場一致だよね。
たぶん爆豪くん以外はできないもの。
が、爆豪くんはそう言って立ち上がり、どこかに歩いていこうとする。
え、爆豪くんがダメならドラムダメになっちゃうよ。
爆豪くんのひと言で、みんなは静まり返る。
その言葉を聞いた透ちゃんが、声を上げる。
"馴れ合うつもりはない"
昔の自分の言葉が、脳内で再生される。
確かに、爆豪くんの言う通りかもしれない。
でも、その馴れ合いから学ぶこともたくさんある。
私はそれを、教えてもらったんだ。
だからきっと、今回のこの文化祭だって得るものがあるかもしれない。
爆豪くんが口を開く。
そう言うと、爆豪くんはこちらに向き直って改まったように言った。
その言葉を聞いて、全員が喜びの声を上げた。
理屈はヤバいけど、どうやらやってくれるみたいだ。
これで一安心かな。
みんなに囲まれている爆豪くんを見て、私は安堵の息をついた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。