覆いかぶさっていた身体を起こしながら、弟が問いかけてくる。
そう言っておろおろし出す弟を見て、思わず笑いそうになる。
自分でやったくせになに焦ってるんだか。
弟は私の中に指を挿れて、自分が出した精液を掻き出す。
もしものことがあったら怖いからね。
こうしとかないと。
確かに先程の弟には、余裕など感じられなかった。
いつもだったらもっと紳士的にしてくれるんだけど、今回はまるで別人のようだったんだ。
ぼっ、と火がついたように顔が熱くなる。
弟はそんな私を見て、少し笑った。
だんだん呂律がはっきりしてきて、普通に話せるようになる。
全く、すぐに可愛いとか言うんだから。
指を抜かれた衝撃で、思わず身体をびくつかせて弟にしがみつく。
弟は驚いたように私を抱きとめ、濡れた髪を撫でてくる。
というか腰が痛い。
この痛みに関しては、たぶん慣れることないだろうなぁ。
そう思いながら、私は弟から身体を離す。
そう言われて、私は椅子に座り直して弟に背を向ける。
...普段の時と行為の時の差が激しすぎるんだよ、こいつは。
普段は甘えんぼなのに、行為の時になったら雄になるんだもの。
あと意地悪になる。
でも行為が終わったとたんにこれだよ。
どうなってるんだろうね。
そんなことを考えていた、その時だ。
父の声が聞こえてきたのは。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!