学校が終わって寮に戻ってきてから、私は共有スペースでくつろいでいた。
自室から持ってきた本を読んでいると、弟が隣に座って覗き込んでくる。
近いんだけど。
弟は私の肩に頭を乗せ、つまらなさそうに本を覗き込んでいる。
なんだよ。
あんたはめんどくさい恋人か。
弟は私の肩にもたれたまま、そのままずるずると下がってきて、私の膝の上に頭を乗っけてくる。
ちょっと本読めないじゃん。
本を取るな。
こんの我儘野郎め。
私の膝の上に頭を乗せ、こちらを見上げてくる弟。
さて、どうやってどかそう。
私がそんなことを思っていることなど知らずに、弟は呑気に私の頬っぺを引っ張ったりして遊んでいる。
峰田くんの声で、私は我に返った。
すっかり忘れていた、ここが共有スペースだということを...。
常闇くん、真顔でこっち見ないで。
誤解を招くからとっとと起きてくれないかな。
二人の言い分はともかく、なんで峰田くんは滝のような涙を流してんだよ。
常闇くんと障子くんは真顔で見つめてくるしさ。
穴があったら入りたいよ。
貴重なのかどうかはわからないけど、弟がみんなの前でこうなってるのは初めてだものね。
そりゃ騒ぐわな。
クールな印象が一気に消え去ったもん。
みんなに聞こえないように、弟はぽそりと小さく呟いた。
まあ私にはバッチリ聞こえてるんだけどね。
とりあえず早く退いてくれ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。