第610話

No.605
6,132
2021/08/08 12:16
芦戸三奈
あー楽しかった!







ゲームをやり終えてから、三奈ちゃんがそう言って紅茶を飲む。







芦戸三奈
峰田の時だけは共通してたよね〜
耳郎響香
まあ、峰田だし
峰田実
オイラがなんだって!?







私たちの会話を聞いていたのか、峰田くんが期待の眼差しを向けながら話に参加してくる。





三奈ちゃんがそれを聞いて、にこにこと笑いながら口を開く。







芦戸三奈
性欲の権化
峰田実
それいいとこじゃねえだろうがよおおおおお!!







知らぬが仏だよ、峰田くん。





まあ、間違ってないだろうからなにも言わないけど。





と、







轟焦凍
なにやってんだ?







突然、背後から声が聞こえてきた。





振り向くと、弟が不思議そうな顔でこちらを見つめている。







芦戸三奈
あ、轟じゃん!今ね、A組の男子のいいところを言い合ってたんだよ
轟焦凍
そうなのか
芦戸三奈
ちなみに轟のいいところはなにもかもがイケメン、ってとこね!
轟焦凍
そうか
芦戸三奈
でもね〜
轟焦凍







三奈ちゃんはそう言うと、ちらりと私の方に目を向ける。





なんだなんだ。







芦戸三奈
あなただけ違うこと言ってたんだよ
轟焦凍
お、なんて言ってたんだ?
芦戸三奈
それは本人の口から聞いてみなよ!
轟焦凍
そうだな。なあ、あなた
あなた
やだ







弟の言葉を遮るようにして、私は口を開く。





そうすれば、弟は不満そうにぷくっ、と頬を膨らませた。







轟焦凍
なんでだ
あなた
そんなの知ってどうするのよ
轟焦凍
どうもしねえけど、聞きてえ。あなたが思ってる俺のいいとこ、聞きてえんだ
あなた
みんなと似たようなのだよ
轟焦凍
芦戸は違う、って言ってたぞ
あなた
...もう







みんなの期待の眼差しがある意味恐いんだけど。





私はため息をついてから、身体の向きを弟の方に変えて口を開いた。







あなた
1回しか言わないからね
轟焦凍
おう
あなた
あんたが私に甘えてきてくれるとこ。これでいいでしょ
轟焦凍
...







なによその顔は。





弟は驚いたようにぱちぱちと瞬きを繰り返していたかと思うと、ふっ、と口元を緩めた。







轟焦凍
じゃあ、これからも甘えていい、ってことだな
あなた
っ、ふん
麗日お茶子
あなたちゃん、照れとる...
蛙吹梅雨
ツンデレさんね、あなたちゃん







赤くなった顔を誤魔化すためにそっぽを向くと、女子たちがそう言いながら微笑ましそうに笑ってこちらを見てくる。





...もう、やっぱりこうなるんだから。







切島鋭児郎
なあ、テレビ見ようぜ!
上鳴電気
ニュース見なきゃだもんな!







男子たちがそう言いながら、こちらに向かってくる。





それを見ていたみんなは立ち上がり、私たちに言った。







芦戸三奈
お二人さん、お幸せに〜
あなた
ち、違うってば!
耳郎響香
照れることないじゃん
あなた
照れてないってば







結局残ったのはヤオモモちゃんだけ。





ヤオモモちゃんも微笑ましそうに笑いながら、私と弟を見つめている。







あなた
あ、ヤオモモちゃん。紅茶美味しかったよ、ありがとね
八百万百
そうでしたか。それならよかったですわ







私は彼女の言葉を聞いてから、食器を持っていくためにお盆を取りに行く。





調理場からお盆を取り、戻ってきたその時だった。





先程つけたばかりのテレビから、ある映像が流れてきたのは。







あなた
___
轟焦凍
___










___がしゃん。







と、私は思わず持っていたお盆を落とし、立ち尽くす。





弟も同様に、無言でテレビを見つめたまま立ち尽くしている。





嘘...なんで、どうして...。





思わず身体から、少しだけ炎が噴き出した。





だってテレビに映っていたのは、脳無にやられている父の姿だったのだから。

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