学校から寮に帰って早々、二人に詰め寄られる。
この二人、恋バナ好きだからなぁ。
少し間を開けて頷くと、三奈ちゃんは目を輝かせる。
透ちゃんも同じようにはしゃいでるけど、うん。
透明だからどんな表情してるのか、全くわかんないや。
なにに悔しがってるのかわかんないけど、二人にとって私は関係ない相手だと思うんだよね。
そもそも私、モテないし。
弟ならわかるけど。
そこまで詳しく知りたがるものか?
二人の勢いにたじろいでいると、突然、誰かに腕を掴まれた。
腕を掴んでいたのは弟。
無言で私を見つめたまま、なにも言わない。
なにがしたいんだこいつは。
そう思っていると、弟は私の腕を掴んだまま歩き出した。
どれだけ話しかけても、弟は無視。
後ろでは、みんながぽかんと口を開けてかたまっている。
私はどうすることもできずに、弟にずるずると引きずられるようにして連れていかれる。
着いたのは弟の部屋。
いきなり自分の部屋に連れてきて、なんのつもりだこいつは。
弟は部屋に入るとドアを閉め、立ち止まる。
もう一度声をかけようとすると、急にこちらを向いた。
こちらを向いたかと思うと、弟は無言で私の背中に腕を回してきた。
なんだなんだ。
もう一度尋ねると、弟はぼそりと呟いた。
消毒?
すんごい失礼なこと言うな、こいつ。
まあ、私にとっては全く知らない相手だし、気にする必要もないんだけどね。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!