第431話

No.428
7,691
2021/04/08 06:13
次の日の朝。





セットしておいた目覚ましを止めて、起き上がる。





...ああ、そうだ。





私、弟の部屋で寝たんだった。





隣を見れば、弟が穏やかな表情で眠っている。







轟焦凍
...







さらさらとした髪に指を通せば、絡まることなく通り抜けていく。





あどけない寝顔を見て、思わず笑った。







あなた
...赤ちゃんみたい







どこか幼さを感じさせるその寝顔を見て、私は笑う。





毎回見る度に同じこと考えるんだよね。





と、







轟焦凍
おい







急に低い声で、弟が口を開いた。





あ、気づかれたパターン?





なんて思っていると、弟は目を閉じたまま口を動かした。







轟焦凍
この葛餅が...どうなってもいいのか...
あなた
...はい?







葛餅?





それって、お父さんが好きな和菓子じゃん。





よく見ると、弟は静かに寝息をたてて眠っている。





じゃあ、今のは寝言か。





てか、夢の中でお父さんとなにしてるの?





葛餅人質にしてどうするのさ。





妙にリアルな情景が思い浮かび、私は思わず笑ってしまった。





...さて、そろそろ起こさないとね。







あなた
焦凍、起きて。朝だよ







そう呼びかければ、瞼がぴくりと動いて長いまつ毛が揺れる。





それからゆっくりと目を開け、澄んだ瞳で私を捉えた。







轟焦凍
...おはよう、あなた
あなた
ん、おはよう...あ、ちょっと







抱きつくな。





学校行くんだから。







あなた
ほら起きて。準備するよ
轟焦凍
んー...
あなた
もう...







ふわあ、と大きなあくびをしてから、弟は眠たそうに目を擦る。





...ほんとに赤ん坊みたい。







轟焦凍
あなた
あなた
なに?
轟焦凍
眠い
あなた
知らんわ







髪ボッサボサじゃん。





あちこちに寝癖ついちゃってるし。





...仕方ない、あの方法で覚醒させよう。







あなた
ねぇ焦凍、こっち向いて
轟焦凍
?どうし...!







弟がこちらを向いた瞬間、私は弟の額に軽くキスをした。





離れて反応をうかがってみれば、ぽかんと口を開けて間抜けな表情をしている。





うん、作戦成功かな。







あなた
よし、じゃあ準備しよっか
轟焦凍
...ずりぃぞ
あなた
え?
轟焦凍
いや、なんでもねえ。準備する
あなた







その後も弟はブツブツと小さな声で呟いていたが、私にはよく聞き取れなかった。

プリ小説オーディオドラマ