咄嗟なことに抵抗できず、私は湯船へと戻される。
なんでこんなことになったんだ...。
なんかもう、いいや。
どうせ前も一緒に入ってたし?
大丈夫、だよね?
なにいってんの?
そう思っていると、弟は後ろから抱きしめてきた。
待て待て待て待て。
おかしくないかこの状況。
いや、肌触れてるし確かにあったかいけども。
これはさすがに双子でもダメでしょ。
図星をさされて言葉が詰まる。
弟に背を向けて座ってしまったのが、運の尽きだ。
でも向き合って座るってのも、なんかなあ。
わかるよね?
ふうっ、と首に息を吹きかけてくる弟。
まじでやめてほしい。
私が首弱いの知っててやってるんだよね、こいつ。
クスっ、と小さく笑いながら、弟は私の首に息を吹きかけ続ける。
この野郎、あとで見てなさいよ。
笑いを含んだ声で言いながら、弟は私の耳の後ろに息を吹きかける。
絶対楽しんでるなこいつ。
てかホントにくすぐったいから、まじでやめてくれよ。
変なスイッチ入った?
完全にドSじゃん。
息吹きかけんな!!
変な声とか出るからやめろや。
振り向くのを拒むと、弟は突然、私の腕を掴んだ。
そして、力づくで振り向かせられる。
握力ゴリラには敵わない。
無言のままの弟に問いかけても、別にと繰り返すばかり。
だけど、弟の視線は一点を見つめている。
その視線の先をたどっていくと、弟が見ていたのは...。
私は弟に一発、拳骨をかました。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。