第503話

No.500
7,217
2021/05/19 21:59
轟焦凍
あなた、あなた
あなた
なに?
轟焦凍
あれ行きたい







校舎内を歩いていると、弟が私の服の袖を引っ張ってくる。





目線の先を見つめれば、普通科のC組が出している心霊迷宮があった。





え、あれ行くの...?







あなた
あれ、お化け屋敷みたいなやつだよ?
轟焦凍
知ってるぞ?
あなた
行きたいの?
轟焦凍
おう。どんな個性使って脅かしてくんのか興味あるからな







あんた怖いもの苦手じゃなかったのかよ。





でもなぁ、私はあんまりこういうの好まないし...。





正直行きたくないんだけど、弟がこんなにも期待の眼差しを向けてくるから断りずらい。





しばらく考えてから、私はため息をついた。





仕方ない、腹を括ろう。







あなた
わかった、行こ
轟焦凍
いいのか...!
あなた
うん。その代わり、絶対に離れないでよ
轟焦凍
もちろんだ







よし、言質とった。





これでもし本物の幽霊が出てきてなにかされたとしても、弟が守ってくれるから問題ないや。





そんなことを勝手に考えながらひとりで納得し、弟と一緒にC組の方に歩いていく。





うわぁ、雰囲気がもう、やばそう...。







あなた
...
轟焦凍
ん、怖いか?
あなた
!べ、別に。平気だもん
轟焦凍
そうか。怖かったら言えよ







まだ入ってもないのに、そんなこと言えるわけないじゃん。





そう思いながら、私たちは心霊迷宮へと入っていった。









***









『五十年経った今でも、なぜか長男の死体だけ見つかっていない...。空き家のはずが、なぜか人がいる気配がすると近所の人たちは言う...』






そんなナレーションを聞きながら、私は既に恐怖でいっぱいだった。





五十年前、凄惨な一家殺人事件があったという設定のお屋敷は、細部までリアリティに凝っていた。





これ、ほんとに作ったやつなの、って疑うほどに。





歩くたびに軋む床。





壁の至る所には、子供が書いたような拙い落書き。





それらがまた、まがまがしく見えてくる。







轟焦凍
大丈夫か?
あなた
...







なにも言わないかわりに、私はぎゅっ、と弟の腕にしがみつく。





脳内は恐怖で侵食されていて、なにも言えなかったんだ。





てか、真っ暗でなにも見えないよ、出口どこなの。





まじで早く出たいんだけど。

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