え?
じゃあやっぱり、あの大氷壁は弟のものだったんだ。
そう言って歩き出したところで、ふと私は疑問に思って聞いた。
ヤオモモちゃんの案?
へえ、なんか意外。
正直、あんま隠しきれてないような気がするんだけど。
ま、いっか。
路地を抜け、人混みの方に向かって歩きだす。
緑谷くんが弟に電話をかけようとした、その時だ。
弟の方から電話がかかってきた。
弟の方は大丈夫なのかな。
どうやら無事かどうかを聞かれているみたい。
にしても、人多すぎない?ここ。
子供扱いしないでくれよ。
同じ高校生なんだから。
駅前には、人がたくさん集まっていた。
みんなの姿を見失わないように、気をつけないとね。
素直にありがとうって言えばいいのに。
変な意地張っちゃって。
そうだ。
私たちがあのまま戦闘を続けていれば、間違いなくオールマイトの足を引っ張る羽目になっていた。
あのオール・フォー・ワンと戦いながら私たちを救出するのは、いくらあのオールマイトでも無茶だろう。
緑谷くんたちが来ていなかったら、どうなっていたことやら。
と、
そう言って緑谷くんは、自分のスマホを差し出してきた。
画面には、『轟くん』という文字が映っている。
安否確認でもしたいのかな。
無事だってことはさっき緑谷くんが伝えていたし、わざわざここで話すこともないんじゃ...。
まあ、今電話に出たとしても、家で散々な目に合うんだろうけどね。
私は少し苦笑しながら、緑谷くんの手からスマホを取る。
それから、恐る恐る耳に当てた。
久しぶりに聞いた弟の声は、少し震えていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。