部屋に戻ってから早々、弟がそう言って抱きついてくる。
あんた風邪引いてること忘れてないか。
好きだと言いながらくっついてくる弟は、幼い頃と少し似ている。
甘えんぼだなぁ。
少し弱々しい声で言い、弟は背後からぎゅう、と抱きしめてくる。
私はそんな弟の頭に手を乗せ、軽く撫でてやる。
ひとりは嫌だ、って言ってたものね。
弟は嬉しかったのか、再び私の肩にぐりぐりと頭を擦り付けてきた。
いつの間にか背後から正面にまわり、こちらをじっ、と見つめてくる弟。
かと思ったら、耳元に唇を寄せて囁いてくる。
ぼん、と音がつくくらい、私は顔を真っ赤にさせる。
弟はそんな私を見ると、満足そうに口角を上げる。
まさに生きる少女漫画。
こんな甘々なセリフ、きっと私以外には誰にも言わない。
少しだけキュンとしたのは黙っておくことにする。
よくもまあそんなセリフを堂々と...。
恥ずかしくないのかこいつは。
ほんっとに恥じらいがないというか、なんというか...。
こっちが照れてばっかりなのは、なんか嫌だ。
私はなぜか対抗心を燃やし、弟を引き寄せて軽く口付けた。
弟が、驚いたように目を見開いているのがわかる。
そう言うと、弟の顔がみるみるうちに赤く染まっていく。
ばっ、と口元を手の甲で隠し、私から目をそらした。
よし、勝った。
弟は顔を赤くしたままこちらを向くと、突然私を押し倒した。
そしてそのまま、唇を合わせてくる。
ありゃ、ちょっとやりすぎたかな。
どこか怒ったような表情でそう言うと、弟は再び唇を重ねてくる。
まあいっか、たまには。
そう思いながら、私は弟のキスに応え続ける。
その後寝転がっていたせいで、そのまま寝落ちしたのは言うまでもない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。