私が歌い終わると、全員が歓声を上げる。
そんなみんなに申し訳なく思いながらも、私は口を開いた。
みんなが同様に騒ぎ出す。
けれど、私は続けた。
それから私は、爆豪くんに目を向けた。
そう言ったあと、もう一度みんなに目を向ける。
私は顔を上げ、笑った。
だから、
そう言うと、みんなは顔を見合わせる。
と思ったら、一斉に私に抱きついてきた。
わーわーと騒ぎながら抱きついてくるみんなに、ひたすらもみくちゃにされる。
でも、不思議と嫌な気持ちには全然ならなかった。
思わず呟く。
と、
弟の凛とした声が響いた。
みんなは瞬きをしながら、不思議そうに離れる。
弟はみんなが離れたのを確認すると、私の方に歩み寄ってきた。
なんだなんだ。
不思議に思いながらきょとんとしていると、突然、腕を引っ張られて引き寄せられ、唇が合わせられた。
突然のことに目を見開く私。
黄色い声を上げる女子たち。
そして、よくわからない歓声と怒声を上げる男子たち。
弟は唇を離すと私を抱きしめ、不敵に笑った。
羞恥から、私は真っ赤になった。
女子たちは黄色い声を上げながら騒いでいて、男子はというと一部が怒鳴り散らしている。
まあ、怒鳴ってるのは峰田くんだけなんだけどね。
てか、後始末どうするんだよ。
なんてことしてくれたのさ、もう...。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。