第152話

No.152
14,964
2020/10/12 07:20
切島鋭児郎
爆豪、なんか食べに行かね?
爆豪勝己
行かねぇ
麗日お茶子
デクくん、一緒に帰ろう!
緑谷出久
う、うん!







放課後。





私はさっさと帰り支度を済ませ、帰ろうとしていた。





...どうせ弟は勝手についてくるんだろうし、誘うか。





ちらりと後ろに目をやると、弟はなぜかそわそわとしていて、どこか落ち着かない様子だった。







あなた
焦凍。一緒に帰る?
轟焦凍
!おう、一緒に帰りてぇ
あなた
ん、行くよ








ぱあっ、と花が咲いたように輝く弟の表情。





相変わらずわかりやすいな、こいつ。







轟焦凍
今誘おうと思ってたんだが、また断られるんじゃないか、って迷ってたんだ
あなた
まあ、ね。








随分嬉しそうにしてんな。





靴を履いて、玄関を出る。





と、







あなた
あ、








ぽつ、となにかが当たった。







轟焦凍
雨か...








空は暗く曇っている。





ぽつり、ぽつりと降っていた雨が、あっという間にザーザー降りになった。





降ってこないうちに、早く帰りたかったんだけどな。







あなた
降ってきちゃったね、
轟焦凍
ああ、どうする?
あなた
走るしかないでしょ、行くよ
轟焦凍
おう








生憎、傘を持ってきていない。





走って帰るしかないんだよなぁ。





正直嫌で仕方ない。







轟焦凍
あなた
ん?
轟焦凍
走るから、手ぇ掴んでろ
あなた
え、なんで
轟焦凍
だってお前、置いてかれっだろ








いや、実際そうなんだけどさ。





そんなにはっきり言わなくても良くない?





なんか傷つくんだけど。







轟焦凍
ほら、行くぞ
あなた
...








どうやらこいつには、女心というものを刻みつけなければならないらしい。





天然だからって、なんでも言っていいわけじゃないんだからね。





私は渋々弟の手を握る。







轟焦凍
...これ、被せとけ
あなた
え、わっ








弟の声とともに、なにかが頭にバサッ、と被せられる。





弟の制服だ。





わかんないけど、上着の部分っていうのかな。







轟焦凍
離すなよ








その言葉に頷いた瞬間、弟は全力で走り出す。





相変わらず速いな。





なんて考えながら走っていると、朝に聞いた声が聞こえた。







あなた
焦凍、止まって!
轟焦凍
!!?








思わず叫び、足を止めた。





驚いてぽかんとしている弟に目を向けず、私は声が聞こえた方に走り出した。





確かここに、ここに居たはずなんだ。







轟焦凍
あなた、どうかしたか?








弟の言葉に答えず、私は声を頼りに探す。





そして、見つけた。







あなた
やっと見つけた...








雨に打たれて鳴いている子猫の姿を。

プリ小説オーディオドラマ