どうして。
もうやめて。
ねぇ、お願い。
戻ってきてよ。
嫌だ。
お願い、戻ってきて。
なんで"そっち側"にいるの?
***
___大丈夫。
"あなたには、俺がついてるから"
***
ゆっくりと瞼を持ち上げる。
真っ先に視界に映ったのは、赤と白のおめでたい色の頭。
2色の瞳。
痛々しい、火傷の跡。
こちらを見つめているのは、弟だった。
弟はほっ、としたように微笑むと、急に私を抱きしめてくる。
力強いから苦しいんだが。
そう言えば、体が離される。
やっぱり魘されてたんだ。
白状しろ、とでも言わんばかりにこちらを見つめる弟。
その手にはのらんからな。
私はふいと顔を逸らし、だんまりを決め込む。
こうなったら意地でも話さないということを、弟はよく知っているはずだ。
その証拠として、弟は仕方なさそうにため息をついたのだから。
これは本当だ。
汗をかいたせいか、怠さはほとんどなくなり、かなり楽になった。
これなら今日中に治りそうかな。
しばらくして出た数値は、37.6℃。
ありゃ、まだそれなりにあるじゃんか。
それにしても、さっきみた夢はなんだったんだろ。
さっきみたばかりだというのに、内容はほとんど思い出せない。
しかも、過去のことに関しての夢なんかじゃなくて、もっと先のことのような夢だった。
...結局、なんだったんだろ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。